いつもは同じ話題を続けて書かずに色々な事をご紹介、共有しようと思ってるんですけど、今回は今書いとかないと今後書く機会が無くなっちゃいそうだなと思ったので前々回から続けて古着Tシャツの話をします。
エッチな話が読みたかった人、ご免なさいw
前に書いた通り、俺自身はバンTにはあまり興味が無くてどっちかって言うとチャンピオンとかのTシャツが欲しいので、今現在みんなの関心がバンTに向かっているのは「しめしめ、今のうちに…」みたいな感じだったりします。
アメカジ好きは大抵チャンピオン好きだし、その中でもMADE IN USAのものを特に偏愛してる事が多いんですけど、結構まだ見落とされてるのがT1011という厚手のTシャツで、コレ現行品もUSA製が売られていて新品でだいたい6,000円前後ぐらいなんですけど、セカストで平気で1,300円とかで売ってたりするんですよね。
「どうせ買うならヴィンテージの方が…」という人は見向きもしないんですが、俺はセカストで見つけたら結構買っちゃう。USA製ならね。
ガサッとした肌触りが好きなのとシルエットも良いんですよ。
カラバリも多くて何枚あっても良い、安価で高品質のお薦め古着Tシャツです。
ただ、このUSA製をもてはやす感じも今後変わってくるかも知れないです。
前に紹介したオワッテルマンさんも言ってたんですけど、バンTの中でも人気のレッチリとかニルヴァーナなんかは90sのTシャツになるんでUSA製でないものが多々あるんですがそれでも平気で高値で売られているし、バンTの陰で今密かに流行ってきているSTUSSYの古着Tシャツも90s後半以降のものだとメキシコ製になっていくんですけど、これもどんどん高値になってきてますからね。
今でこそ古着屋でTシャツディグっていて、良いなコレと思ってタグをチェックして中国製だったら「何だよ」と思いますけど、50年後とかには中国製が高値になってる可能性だってあるんだなぁ、みたいな。
という訳でバンT人気がエライ事になってる現在。
ぶっちゃけもう札幌も30℃を超える日があって、こうなってくると俺はタンクトップ派になるので益々黒いバンTなんて興味無くなるのですがw、前述した様に特に人気なのがニルヴァーナですよね。
で、実は今回話したいのがこのニルヴァーナについてなんですよ。
まずね、当時を知ってる人間として言わせてもらうと、「日本ではニルヴァーナって別に人気なかったじゃん。」っていうねw
随分前にこのブログで「ロックとは反骨精神の音楽」みたいな話をして、その中でニルヴァーナをはじめとするグランジの出現をさらっと説明したんですが、重複になりますが改めて当時の事を説明すると、そもそもイギリスで起こったニューウェイブオブブリティッシュヘヴィメタルというムーブメントに影響されて、アメリカでもメタルをやり出す若いバンドが80年代に出てきます。
ところが特にロサンゼルスの若いバンド達はメタルよりもパーティーロックンロール的なサウンドになっていっちゃうんですよ、気質的に。
派手な格好をして「酒だ、セックスだ、ドラッグだ!」みたいのがLAメタルと呼ばれて、見た目にもインパクトがあったのが当時のMTVの隆盛と相まって人気を博して、そういったバンドが続々と現れます。
と、その一方でアメリカでもメタルのコアな部分を強調して、とんでもないスピードの曲が特徴のスラッシュメタルというジャンルを確立するバンドも出てきて、特に同じカリフォルニア州でもロサンゼルスより北のサンフランシスコにそういったバンドが沢山出てきたのでベイエリアクランチなんて呼ばれたりして、アメリカのメタルシーンは二極化していったんですよね、派手とコアに。
で、それが80年代も後半になってきて、パーティーロックンロールをやってた若いバンド達もだんだん30代になってきてそろそろバカ騒ぎも似合わなくなっていって、一斉にブルーズ回帰しだしたりと、ちょっと雰囲気が変わりはじめたんです。
と、そこにきてスラッシュメタルのフロントランナーだったメタリカが通称ブラックアルバムと呼ばれる、遅くて重苦しい曲ばかり収録したアルバムをリリースして、いよいよアメリカのロックシーンに明確に変化が訪れたと。
そんなタイミングにシアトルから続々と現れたのが所謂グランジバンド達でした。
当時の政治的状況として、世界の警察を自認するアメリカは中東問題に首を突っ込んだ結果湾岸戦争に突入して、遠く離れた異国でアメリカ人兵士が命を落としたり、無事に帰ってきてもPTSDに悩まされたりと到底ハッピーな気分ではなかったというのがグランジの倦怠感、フラストレーションにマッチした事で一つのムーブメントとなっていったんですよね。
で、そのグランジバンド達の筆頭格がニルヴァーナだったと。
ところがですね、日本ではグランジは全然響かない訳ですよ。
日本人にとっては湾岸戦争なんて他人事そのものでしたからね。
そもそも日本人はポップなものや流麗なものが好きな人が多いのと、これは当時俺自身もそうだったんですが演奏力の高さを洋楽に求める人も多いですよね。
グランジの様なフラストレーションを前面に押し出したラフな音楽は日本人の嗜好にはマッチしないんですよね。
例えばパンクが流行った時も日本ではあんまりでした。
政治とか体制に対する若者のフラストレーションというのは日本では60年代に大学運動というかたちで現れて、それを見て「やだなぁ、おっかないなぁ。」って思ってた子供達がティーンエイジャーになった頃にイギリスを中心にパンクブームが起こったもんだから、当時の日本人は「いやクイーンが良いです。」みたいになりますよね。
日本でパンクが受け入れられたのはイギリスではすっかりブームが過ぎ去った80年代に入ってから、ブルーハーツというバンドの出現によって成される訳ですが、ブルーハーツは「リンダリンダ」とか「人に優しく」とか、あと「僕の右手を知りませんか」みたいな文学的な世界観をパンクサウンドに持ち込んで日本人の好みに引っ掛かったバンドなんで、フラストレーションミュージックとは違うんですよね。
彼らの成功後、サウンドはパンクっぽいのに詩世界はポジティブなバンドが続々と現れて、なぜかそれらのバンドをビートパンクなんて呼んでた時期がありました。
あと、ラップもですよね。
ラップって黒人差別だったり、それを根底とする様々な問題に対しての怒りや問題提起というところからスタートしてるものですよね。
でも日本人がラップを一斉にやりだしたのって、内容が「両親にありがとう」「仲間達にリスペクト」みたいなのがアリってなってからみたいなところありましたよね。
元々は怒りやフラストレーションの発露だったものは日本人には受け入れられなくて、音楽のスタイルだけ取り入れて詩の内容はポジティブなものに変えちゃってからやっとOKになるんですね。
で、グランジは音楽のスタイル自体がどこを切ってもフラストレーション丸出しだったんで、日本人にはウケが悪かったんですよ。
当然そのフロントランナーであるニルヴァーナも。
で、これも以前書いたんですけど、日本にはグランジという言葉はファッション用語として広まったというところがあったんです。
当時のグランジバンドのメンバーが着ていた服をアメリカの若者達が真似する様になって、それがアメリカでのファッショントレンドとして日本に伝わってきたんですね。
で、その服装というのがチェックのネルシャツでした。
これ、洋服好きな人は「アレ?」と思うかも知れません。
「自分の知ってるグランジと違う。」と。
グランジといったらカーディガンじゃないの? と思ったかもしれませんが、当時のグランジバンドのアーティストでカーディガンを愛用してたのって、ニルヴァーナのカート・コバーンだけですよ。
つまりもう、今じゃグランジというのはイコールカート・コバーンになっちゃってるんですね。
他にも色々なバンドがいたのに。
因みに当時ニルヴァーナと双璧を成す存在だったパールジャムが今年の3月頃に新譜をリリースしてるんですけど、これをどれだけの人がチェックしてるのかって話ですよね。
ニルヴァーナが伝説的存在となったのはフロントマンのカート・コバーンが自身の頭をショットガンでぶっぱなして自殺するというセンセーショナルな事件があったからでしょう。
これで日本人もニルヴァーナを知り、評価する様になった。
まあ良くある話ですな。
神格化というヤツ。
例えばクイーンだってアメリカでは元々ウケは良くなかったバンドでしたけど、フレディ・マーキュリーのエイズ死をきっかけに伝説のバンド扱いになりましたよね。
音楽以外でも映画「ダークナイト」が、ジョーカー役のヒース・レジャーのドラッグオーバードーズ死によって異常な人気となりましたし。
まあTシャツの話で言うと、カートの自殺によってニルヴァーナが強制終了となった事から活動期間が短いという理由で、オフィシャルのツアーマーチャンダイズがレアアイテム化して高値になるのは分からなくもないけど、それ以外の一般的なアパレル商品としてのTシャツに関しては、こと日本人が着ていたり欲しがったりしているのを見ると「ホントにニルヴァーナ好きなの?」って気がどうしてもしちゃうのよね。
というのが一点。
カート・コバーンの自殺の原因というのは、まあ本人にしか分からないというのが正しい訳ですけど、一般によく言われているのがカート自身のポップアイコン化に対するカート本人の嫌悪という説です。
勿論、そこにドラッグが大きく関わっているのは間違いないでしょうが。
グランジのアーティスト達は当時のアメリカのシリアスな空気感を体現していた人達な訳で、それ以前のLAメタルの、派手な格好で能天気な内容の曲をやって人気になった様な人達と正反対みたいなアティテュードでして、だからアーティスト本人がキャラクター的な人気者になったりとか、スキャンダラスな存在として世間を賑わすみたいなのには嫌悪感を抱くという事になると。
ところがカートはまさにそういう存在になっちゃったんですよね、結果的に。
ホールというバンドのコートニー・ラヴという女性と結婚した事で所謂芸能人カップルになり、新曲をリリースした訳でもなければライヴをやった訳でもないのに、カートの言動、一挙手一投足がセンセーショナルなゴシップとなる。
フラストレーションの発露が「いいぞもっとやれ」みたいに面白がられるなんて、キツかったろうし許せなかったんだろう、と。
そうしてドラッグの問題を克服できず、27歳の若さで自殺に追い込まれたというのが通説なんです。
で、だとしたら、自身のポップアイコン化が許せず自殺したのに、結果それで神格化されて皆がニルヴァーナのTシャツをこぞって着てるっていう現状をさ、それで良いのかと思っちゃうのは俺だけなの? っていう。
当時ニルヴァーナと共にグランジシーンを牽引したパールジャムやサウンドガーデンやアリスインチェインズは別に評価されるでもなくTシャツが売れるでもなく、どう考えてもグランジって一過性のブームでしかないのが明白だし、特に日本人には響かないヤツな筈なのに、ファッションアイテムとして皆がニルヴァーナのTシャツ着てるのって、あまりにもアイロニック過ぎやしませんか?
ねぇ、なんだかなぁって。
という訳で、そもそも服装かぶりたくないおじさんの俺はニルヴァーナのTシャツは着ないのですよ、勿論。
もし仮に俺がニルヴァーナの大ファンだったとしても、カートの心情を思ったら着る気にならないでしょう。
ましてやプレミア価格の付いた物なんて買う訳ない。
俺は1,300円の古着のT1011で良いです。
ね、価値観は人それぞれですね。
これを読んでる人で、ニルヴァーナのTシャツを愛用してる人がいたらスミマセンw
おしまい。