part.1 の続き
何日か前から、しょうちゃんも妹も学校に来なくなってたんだって、二人とも。 で、同じクラスの子達数人と担任の先生とでしょうちゃんの家に行ってみたんだけど、チャイムを押しても反応がなくて、管理人を呼んで鍵を開けてもらったら、もぬけの殻だったんだって。 それを見た担任の先生が「ああ、これは夜逃げだねぇ。」と言ったんだそうな。 で、その翌日、学年中が「しょうちゃんが夜逃げした!」っつってザワザワしてたって訳だったの。 ただでさえ母子家庭で二人の子供を育てていて、しかもその一人は発達障害で、遅くまで働いて大変だったところに火事ときてしまって、耐えきれなかったみたいで。 恥ずかしながら俺は、夜逃げという言葉もコレで初めて知ったんです。しょうちゃんのおかげ?で、また新しい言葉を覚えた。 こうして俺達のマスコット、しょうちゃんは俺達の前からいなくなってしまったんだ。 それからしばらく時が流れて、俺達は六年生になって、小学六年生といったら最大のイベントは修学旅行。 札幌の小学校の修学旅行といったら行き先はだいたい洞爺湖温泉なの。 有珠山という活火山があって、昔その有珠山が噴火した時に隆起した昭和新山という山があったり、そういうのを見学してから洞爺湖温泉に泊まるのね。 勿論女湯のぞきにも無事失敗して、一泊した翌朝、洞爺湖畔の大きな公園的なスペースに整列させられて、ラジオ体操させられたのね。 これもやっぱり札幌の修学旅行の定番なので、俺らと同日に修学旅行の小学校の生徒達もいる中ラジオ体操をし終わったら、なんと信じられない事に先生が「じゃあホテルまでジョギングで戻りましょう。」って。 そりゃ修学旅行の2日目なんてバスに揺られて帰るだけだから朝のうちに体を動かしておくのは利にかなってるんだけど、生意気盛りの六年生、「えぇ~」なんて言ってみたものの、所詮は小学生なのでおとなしく走ってホテルに戻る事になり。 俺は六年生の時1組だったので、整列した時は最初に並んだのでホテルに戻る時は逆に最後尾になって、みんなの後からタラタラと走ってついていったの。 そしたらなんか、前を走っている同じ学校の生徒達がザワザワしだしたの。 え、ナニナニどうしたの?って聞いたら、前の子らがみんな「しょうちゃんがいる、しょうちゃんがいる。」って言ってる訳。 え、何処に?ってみんなの指差す方を見たら、確かにいるんだよ、しょうちゃんが。 どうやら夜逃げしたといっても札幌市内にはいたみたいで、別の学校に転入したのが、たまたま俺らと全く同じ日に修学旅行で洞爺湖に来てたんだ。 で、俺らと同じ様に整列させられて、ラジオ体操させられたっていう。 で、俺もみんなも「え、あ、ホントだ、しょうちゃ~ん!」ってなったんだけど、勿論しょうちゃんの周りに群がる訳にもいかず、みんなでしょうちゃんに手を振りながらホテルに向かって駆け抜けていくだけっていうねw 「バイバ~イ!」って言って。 しょうちゃんの方もラジオ体操してる最中なので手を振り返す事もできないんだけど、俺達の知っているしょうちゃんよりちょっと背が伸びたものの、変わらない笑顔を俺達に向けてくれていた。 ぶっちゃけ小学校の修学旅行の内容なんて殆ど覚えてないんだけど、あのしょうちゃんの姿だけは鮮明に覚えている。 そしてホテルに走り着いた俺達みんなが「しょうちゃん元気にしてたんだ、良かった。」という気持ちになったあの感じも、きっと一生忘れないんだろう。 おしまい。