2020年5月18日月曜日

如何にして『スキニージーンズは好きに~なれない』という駄洒落は生まれたのか vol.1

 こないだお昼の情報番組の、ファッションチェック的なコーナーを観てたんですけど、どうやら今年は男性がスキニージーンズを穿くのは恥ずかしいタームに入る様ですね。
 スキニー愛好者の方はこれを読んでギョッとしてるかもしれませんが、かくいう俺は実はスキニージーンズをお洒落とも格好いいとも思った事が無く、買った事も穿いた事も無いんですよ。
 これにはちゃんと訳があって、今回はそれを書いてみようと思います。
 音楽ユニットのオフィシャルブログなのに、またお前は音楽に関係無い事を書くのかと思うかもしれませんが、それが以外と関係無くもないという話。

 そもそもジーンズのルーツって、アメリカのゴールドラッシュ時代、一攫千金を夢見て金鉱山を掘る人達の為に、リベットで補強した頑丈なパンツが作られて、結局儲けたのは金鉱山を掘った人達よりパンツを作ったメーカー、リーバイスだったという話だったりする訳ですが、更にこの頑丈なパンツがカウボーイにも普及して、ヘビが嫌うインディゴで染めたので藍色になったんですね。
 だから素材もゴワゴワした硬い生地だった訳です。

 その実用的な作業用パンツがカジュアルファッションとして受け入れられた事で様々なデザインのバリエーションも生まれてきて、80年代にはケミカルウォッシュとか、ウエストにタックが入って裾がすぼまったスリムジーンズなんてのも生まれては廃れていきました。

 生地の方もゴワゴワの硬い素材からライトオンスの薄いものが出てきたり、レーヨン素材のフニャフニャしたものが出てきたりした後、遂にストレッチ素材を使ったものが出てきて、それで体にピッタリとフィットするスキニージーンズが登場して、それが90年代頭ぐらいの事でした。

 で、丁度その頃、メタリカというバンドが「メタリカ」というアルバムをリリースします。
 メタリカというバンドはそれまではかなりスピーディーなヘヴィメタルを演奏していたバンドで、そのスタイルは多くのフォロワーを生み出し、スラッシュメタルというジャンルを確立させた張本人みたいな人達なんですが、それが90年代に入って突然重苦しくゆっくりな曲が多数収録されたアルバムを出してきたのです。
 それが「メタリカ」というアルバム。
 アルバムジャケットはほぼ真っ黒で、隅っこに見えるか見えないかぐらいにバンドロゴがあしらわれていました。
 かつてビートルズが真っ白いアルバムジャケットに小さくバンドロゴだけをあしらった『ザ ビートルズ』というアルバムを発表し、そのアルバムが通称「ホワイトアルバム」と呼ばれているのになぞらえて、真っ黒いジャケットのメタリカの「メタリカ」というタイトルのアルバムは通称「ブラックアルバム」と呼ばれる事になります。

 その後、パンテラというバンドがヘヴィでありながらリズムセクションの構成を工夫して強烈な迫力を持ったサウンドを展開してみせた事でヘヴィメタルは一気に重いサウンド路線がトレンドとなり、又、ヘヴィメタル以外のロックもグランジの登場によって重いサウンド路線になっていくんですが、まあその話は置いといて。

 メタリカはそのブラックアルバムのイメージ戦略として、メンバー全員が真っ黒でタイトなTシャツに、やはり真っ黒でタイトなスキニージーンズを穿いてる写真を出してきたんですよ。

 その写真を見た俺はこう思ったのです。

 「いやモジモジくんみてぇだな!」


vol.2 へ続く