2021年12月27日月曜日

しょうちゃん part.2

  part.1 の続き

 何日か前から、しょうちゃんも妹も学校に来なくなってたんだって、二人とも。  で、同じクラスの子達数人と担任の先生とでしょうちゃんの家に行ってみたんだけど、チャイムを押しても反応がなくて、管理人を呼んで鍵を開けてもらったら、もぬけの殻だったんだって。  それを見た担任の先生が「ああ、これは夜逃げだねぇ。」と言ったんだそうな。  で、その翌日、学年中が「しょうちゃんが夜逃げした!」っつってザワザワしてたって訳だったの。  ただでさえ母子家庭で二人の子供を育てていて、しかもその一人は発達障害で、遅くまで働いて大変だったところに火事ときてしまって、耐えきれなかったみたいで。  恥ずかしながら俺は、夜逃げという言葉もコレで初めて知ったんです。しょうちゃんのおかげ?で、また新しい言葉を覚えた。  こうして俺達のマスコット、しょうちゃんは俺達の前からいなくなってしまったんだ。  それからしばらく時が流れて、俺達は六年生になって、小学六年生といったら最大のイベントは修学旅行。  札幌の小学校の修学旅行といったら行き先はだいたい洞爺湖温泉なの。  有珠山という活火山があって、昔その有珠山が噴火した時に隆起した昭和新山という山があったり、そういうのを見学してから洞爺湖温泉に泊まるのね。  勿論女湯のぞきにも無事失敗して、一泊した翌朝、洞爺湖畔の大きな公園的なスペースに整列させられて、ラジオ体操させられたのね。  これもやっぱり札幌の修学旅行の定番なので、俺らと同日に修学旅行の小学校の生徒達もいる中ラジオ体操をし終わったら、なんと信じられない事に先生が「じゃあホテルまでジョギングで戻りましょう。」って。  そりゃ修学旅行の2日目なんてバスに揺られて帰るだけだから朝のうちに体を動かしておくのは利にかなってるんだけど、生意気盛りの六年生、「えぇ~」なんて言ってみたものの、所詮は小学生なのでおとなしく走ってホテルに戻る事になり。  俺は六年生の時1組だったので、整列した時は最初に並んだのでホテルに戻る時は逆に最後尾になって、みんなの後からタラタラと走ってついていったの。  そしたらなんか、前を走っている同じ学校の生徒達がザワザワしだしたの。  え、ナニナニどうしたの?って聞いたら、前の子らがみんな「しょうちゃんがいる、しょうちゃんがいる。」って言ってる訳。  え、何処に?ってみんなの指差す方を見たら、確かにいるんだよ、しょうちゃんが。  どうやら夜逃げしたといっても札幌市内にはいたみたいで、別の学校に転入したのが、たまたま俺らと全く同じ日に修学旅行で洞爺湖に来てたんだ。  で、俺らと同じ様に整列させられて、ラジオ体操させられたっていう。  で、俺もみんなも「え、あ、ホントだ、しょうちゃ~ん!」ってなったんだけど、勿論しょうちゃんの周りに群がる訳にもいかず、みんなでしょうちゃんに手を振りながらホテルに向かって駆け抜けていくだけっていうねw  「バイバ~イ!」って言って。  しょうちゃんの方もラジオ体操してる最中なので手を振り返す事もできないんだけど、俺達の知っているしょうちゃんよりちょっと背が伸びたものの、変わらない笑顔を俺達に向けてくれていた。  ぶっちゃけ小学校の修学旅行の内容なんて殆ど覚えてないんだけど、あのしょうちゃんの姿だけは鮮明に覚えている。  そしてホテルに走り着いた俺達みんなが「しょうちゃん元気にしてたんだ、良かった。」という気持ちになったあの感じも、きっと一生忘れないんだろう。  おしまい。

2021年12月13日月曜日

しょうちゃん part.1

  俺が通っていた小学校の同学年に、しょうちゃんという男の子がいた。  今で言うところの「発達障害」というヤツなのだろうが、俺の子供時代にはもっと残酷に「知恵遅れ」なんて言い方がされていた。  しょうちゃんは身体の大きさは俺らと変わらなかったけど、頭と心は4~5歳といったところで、だから勉強も運動も俺らと同じ様にはできない子だった。  でも、そうは言ってもしょうちゃんは明るくて無邪気な子だったので、別に虐められたりする事もなく、どちらかというと学年のマスコット的な存在としてみんなに可愛がられていたのね。  多分二年生の時なんだけど、学校の近くにわりと大きな公園があって、そこには芝生に覆われた小高い丘が作られていて、その丘の1面の斜面がコンクリートでツルツルの大きな滑り台になってて、その下は砂場になってて、だから滑り台を滑り降りると砂場にザシュッって降りる事になるんだけど、そこって雨が降ると滑り台の部分は雨水を吸収しないからそのまま砂場に流れ落ちちゃって、だから砂場の部分が大きな水溜まりになっちゃうの。  雨上がりの日の放課後、その公園に寄ったらしょうちゃんが水溜まりになった砂場に向かって滑り台を滑り降りてたの。  ランドセルをソリみたいにお尻に敷いて。  勿論水溜まりにバシャーンって突っ込んで行っててランドセルはビッショビショ。  当然中身の教科書やノートも泥水まみれになった筈なんだけど、しょうちゃんはキャッキャとはしゃぎながら繰り返し滑り台を滑り降りてるの。  俺達は「しょうがないなぁ」って眺めてるしかなかった。あんまり楽しそうなんだもの。  俺は3~4年生の時しょうちゃんと同じクラスだったんだけど、その学年になると算数には掛け算、割り算が出てくるよね。  しょうちゃんは算数のテストを×や÷の所を鉛筆でグリグリと塗り潰して、その上に+や―を書いて答えるというトンチの効いた事をして、でもそれも半分ぐらい間違ってるの。  しょうちゃんって、そんな子だった。  で、五年生になって俺はしょうちゃんと違うクラスになっちゃったんだけど、ある日学校に行ったら学年中がなんかザワザワしてたのね。  どうしたの?って聞いたら、「しょうちゃんの家が火事になった」って。  これはあくまで小学生の間での噂なので真偽の程は定かでない事をご了承いただきたいんだけど。  しょうちゃんの家は母子家庭で、で、しょうちゃんには同学年の妹がいて、当時は同学年なんだから当然双子なんだと思ってたんだけど今考えたら二人は全然似てなかったんでその辺どうなのか分からないんだけど、兎に角しょうちゃんのお母さんは二人の子供を女手一つで育てていて、だから遅くまで帰ってこないらしくて、それでお腹がへったしょうちゃんと妹はパンを焼く事にしたんだって。  なんだけど何故か二人はパンをフライパンで焼く事にしたらしいの。  で、アツアツになったパンを手で持てなくて、ティッシュを持った手でパンを取ろうとして引火したらしい。  繰り返し言うけど真偽の程は怪しいんだけど。  幸いというか、しょうちゃんと妹は怪我とかは全然しなかったんだけど、家財道具は焼けてしまったんで学校のみんなでカンパしてねって話になったの。  俺はその時までカンパという言葉を知らなくて、しょうちゃんのおかげ?で一つ言葉を覚えたの。

 それからしばらくして、学校に行ったら、また学年全体がザワザワしてるのよ。  で、どうしたの?って聞いてみたの、また。

 part.2 へ続く

2021年11月29日月曜日

源氏物語のすすめ - 弐 -

- 壱 - の続き

   で、弘徽殿の女御に3年遅れて桐壺の更衣も男児を産む訳ですが、心労からくる体調不良が祟って産後すぐに桐壺の更衣は亡くなってしまうんです。  この桐壺の更衣が産んだ男児というのが源氏物語の主人公の光源氏なんですね。  帝の血筋を絶やさぬ為にある後宮という所にいた女性が産んだ子供なのですから、光源氏は当然後の帝候補、つまり親王と呼ばれる立場となる訳ですが、自分より3年前に既に帝の血を引く男児は産まれていて、しかもその母親は右大臣家の出身という麗しい家柄。  しかも自身の母親は亡くなってしまって育ててくれる人もいなくなったので後宮に置いておかれる訳にもいかず母親の実家に預けられるんですが、母親の後ろ楯である中納言も亡くなっているんで光源氏は赤ちゃんの頃はお祖母さんに育てられるんです。  この時点で親王、帝の後継者争いという面ではもう敗北なんですよ。宮中にすら居られないんですから。

 ところがここには、桐壺の更衣を寵愛した帝という方がいる訳です。  他の女御、更衣を蔑ろにする程に桐壺の更衣を寵愛した帝は、その忘れ形見である光源氏の事もまた、可愛くて可愛くて仕方がない。  で、とうとう帝は光源氏を再び宮中に呼び寄せて、自らの手元に置いて自分で育てる事にしちゃうんです。  これは異例中の異例なんですよ。  気が気でないのは弘徽殿の女御ですよね。  桐壺の更衣が亡くなって今度こそ寵愛が自分に向くかと思ったら、桐壺の更衣の産んだ子を帝自ら育てだしたんですから、自分どころか下手すりゃ我が子の立場だって危ないんじゃないかと思ってしまいますよね。  当時の宮中には春宮(とうぐうと読みます。ナゼだw)という、次の帝に定められた方がいて、これが帝の弟さんになっているんですよ。  丁度今、現実の世界でも天皇陛下の弟君である秋篠宮様が後嗣という次の天皇と定められたお立場ですよね。同じ様な事と考えて良いと思います。  で、この春宮である帝の弟君という方が病弱という事もあって、弘徽殿の女御は春宮の座を我が子に移す様に帝に訴えるという事をするんです。  結局帝の在位中に弟君が先に亡くなってしまったので、弘徽殿の女御が産んだ子が春宮になるんですけどね。  さて、となると光源氏ですよね。  やっぱりお世継ぎ争いでは負け確ですよね。  でも帝はこの子が可愛くて可愛くて仕方がないんです。  どうしても幸せになってほしい。  そこで帝は光源氏が14歳となって元服となった時点で、光源氏を親王から臣下に落とすという事をするんです。  帝の後継者候補として宮中にいるのではなく、宮中でお仕事をする、現在で言うところの官僚みたいな立場ですよね。  で、それと同時に光源氏を左大臣の家に婿入りさせるんですよ。  左大臣といったら、右大臣より上の地位なんですね。  帝が頂点だとすると、No.2。  そこの家の娘さんと結婚させちゃうの。  という事は、親王としては勝ち目がなくても臣下という宮中務めの人としては最強ですよね。血筋も家柄も。帝の実の子で尚且つ左大臣家のお婿さん。  もう一生安泰と言っても過言でない立場というのを、光源氏は帝によって与えられるんです。  もうぶっちゃけ仕事なんてろくにしなくたって良いみたいな状態なんですが、何しろ見目麗しい美少年の上、帝の手元で英才教育を受け、また本人にも才覚というものがあった光源氏という人、歌を詠んでも舞を舞っても笛を吹いても琴を奏でても超一流。  だから宮中行事では引っ張りだこなの。もう宮中のスーパースターなんですよ。何かあるとすぐに「それは源氏の君にお願いしないと」ってなっちゃう。  こんな出来すぎたキャラクターなんですが、でも待って。  元服と同時に婿入りしてるという事はですよ、この人恋愛経験というものが全く無いまま所帯持ちになってるんですよね。  この人がこの後どの様な事になって、色恋沙汰に耽っていく人生となっていくのでしょう。  ちょっとだけ話すと、この宮中のスーパースターさん、実は夫婦関係はギクシャクしてるんです。  だってね、よく考えてみると、光源氏と結婚した左大臣の娘の葵の上(あおいのうえ)って、家柄からしたら女御になれる筈じゃないですか。  帝の御寵愛を受けられるという、当時の女性達の夢を叶えられる立場だと思ってたら、いきなり帝の落とし子を押し付けられたんだから、面白い訳がないんですよ。  ところでね、この葵の上という方にはお兄さんがいるんですよ。葵の上が光源氏の二つ歳上だから、光源氏とは4つか5つ離れてると思うんですけど。  このお兄さんが、もうね…  さてさて、ここから先は読んでみてのお楽しみ。  一つだけ見所を教えとくと、オカルティックな要素もあったりするんですよ。  帝の弟君が病弱な方で早くに亡くなってしまうという事を書きましたが、それで未亡人となってしまう元春宮の奥様、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)という人物が、まあとんでもない方なんです。もう影の主役と呼んでも過言でない。源氏物語というお話をグワッと転換させる強烈なキャラクターなんです。  で、俺のお勧めは橋本治さんの窯変源氏物語で、これはかなり分かりやすく書かれているものなんですけど、もう一冊、源氏物語図鑑も持っておくと更に分かりやすくなると思います。  当時の寝殿造りの建物やお庭の構造や、家内の調度品の形や用途、着物の色柄だったり宮中の冠位の説明だったり各キャラクターの血縁関係だったり、文章だけでは分かりにくい物も図や写真で見られるので、あると凄く便利です。  長々と書いてきましたが長大なドラマのほんの頭の部分しかお教えしてませんからね。  まだまだ面白いエピソードや面白いキャラクターが幾らでも出てきます。  もう随分前に出版された本なので、古本を探せばかなり安価に手に入れる事が出来ると思います。  勿論お話としても面白いし、読めば「あ、俺、源氏物語全部読みましたよ。」と人に言える人生を手に入れる事ができちゃいますよ。  読もう、源氏物語。  おしまい。

2021年11月15日月曜日

源氏物語のすすめ - 壱 -

  本文に入る前に一つご報告。  Spotifyでの我々のアーティスト名、正しくcunoとなりました。  oceanfrequencyがSpotifyに訴えてみたところ、修正してくれたそうです。  まあ、そりゃそうだよねって話なんですけどね。  我々cunoで商標登録してあるんだから、この名前使えない筈がないんです。  ただ、海外の感覚だと例えアーティスト名だとしてもアルファベット小文字から始まるというのは一般的でないからなんでしょうね。  別に我々も小文字にこだわったわけじゃなく、3Mの液体用金属フィルターCUNOというのが既にあったから小文字にせざるを得なかっただけなんですけどね。  まあなんにしろ良かったです。幾らなんでもC-Unoは駄目だもんw  て事で本題です。  以前ここのブログで竹取物語の事を書いた時に、「映画『かぐや姫の物語』でかぐや姫を女御に、と言ってて違和感があった」云々といった事を話して、女御と更衣の違いを説明した事があったんですけど、コレ読んで「何でこの人こんな事知ってるの?」と思われた方もいらっしゃったかと思います。  ハイ、アタクシ、源氏物語も既に読了済みなんですね。  と言っても、勿論原文を読んだ訳ではないです。  そんな頭良くないw  で、普通の現代語訳、例えば瀬戸内寂聴さんの書いたものとかを読んだのかというと、実はそれも違うんですよ。  俺が読んだのは故・橋本治さんという方が書かれた「窯変源氏物語」というものなんです。  橋本治さんというのは東大文学部卒の作家さんなので古文なんかもすらすら読めちゃう人なんですよ。  俺がこの人を知ったのは高校時代、故・影山民夫さんのエッセイを読んでたら、影山さんが「この人は絶対天才」と橋本さんの事を絶讚してたんですね。  それで興味を持って調べてみたら、橋本治さんは「桃尻娘」の原作者だったの。  若い人には「は?」って話ですよね。  昔々、日活という映画会社がエッチな映画を次々に作ってた事があって、それを総括して「にっかつロマンポルノ」と呼んでいたんですけど、その中の一作が桃尻娘だったんです。  昔は今に比べて色々とおおらかだったので、深夜にテレビでロマンポルノが放送されてたりして、俺ら世代は大体観た事あるんですよ。(というか、VHSに録画したりしてたw)  だから桃尻娘の原作者だと知って、「そうなの?」と思って買って読んでみたら全然エロくないのw  多分桃尻娘というタイトルのインパクトだけで原作として取り上げたんでしょうね。  内容は学園祭を成功させようと奔走する女子高生のお話でした。  で、この小説は一人称、主人公の女子高生の視点で書かれてるんですよ。  前述した様に橋本さんは東大出身の男性なんですけど、小説は完全に女子高生目線、女子高生口調で書かれてるっていう。  こんな風に誰かに「憑依」するのが得意な方なんですね。  で、古典も読めるという特技も活かして「桃尻語訳 枕草子」なんてのも書いてたりします。清少納言が書いた随筆を女子高生口調に直しちゃってるってヤツ。  俺の読んだ「窯変源氏物語」というのは、元々紫式部が三人称で書いた源氏物語を主人公の光源氏視点で私小説に書き替えたものなんです。  つまり、橋本治さんが光源氏というキャラクターに憑依して書いたみたいな。  で、そこに様々な補足説明的なものも追加してあるので、平安時代当時の風習とか現代人に分かりにくい部分もフォローされてて、かなり理解しやすいものになっているんですよ。  なので、源氏物語というものをいつかは読んでみたいと思ってる方にはかなりお勧めなんです。  ただ、多くの人は源氏物語って面白いの?って感じですよね。  なんか平安時代の色男があっちこっちの女性に手を出すみたいな話なんでしょ?っていう。(まあ、概ねその通りなんですがw)  て事で、今回源氏物語のさわりの部分だけ交い摘まんで説明してみようと思います。  それで興味を持たれたら是非読んでみてほしいし、そうでなくてもトリビア的な、人に「ねぇねぇ知ってる?」って言いふらせる知識としてアリかなみたいなw  竹取物語の時も書きましたけど、源氏物語の冒頭部分、「いづれのおおんときにか」ってヤツ高校で教わると思うんですけど、あれの内容って覚えてます?  あれを交い摘まんで言うと、後宮に多くの女性が集められてる中に、さして家柄は良くないにもかかわらず帝の御寵愛を特に受けた女性がいたという内容なんですね。  竹取物語について書いた時に説明した通り、家柄が良い訳ではないというのですからこの方は更衣という事ですね。後宮の中の桐壺というところにいらしたので桐壺の更衣と呼ばれる方なんですけど。  具体的に言うとこの方は中納言の家の出身なんですが、父親の中納言は既に亡くなっていて、だから後ろ楯というのが無い、立場の弱い方でもある訳です。  で、この方が帝の御寵愛を一身に受けるもんだから、他の後宮の女性達から妬まれていびられちゃったりするの。  このお話の世界では後宮に弘徽殿(こきでん)の女御という、右大臣の家出身の女性がいて、この方が先ず男児を産むんです。  なのにこの弘徽殿の女御をもそっちのけにして桐壺の更衣ばかりを寵愛するもんだから、妬み、いびりの中心人物も弘徽殿の女御だったりするんですね。  で、桐壺の更衣は心労でどんどん弱っていってしまうんですけど、その様子を見て帝が「可哀想に」といって尚更寵愛を深めるもんだから、もう悪循環だっていう話が、あの冒頭部分の内容なんです。

 

- 弐 - へ続く

2021年11月1日月曜日

閃光のハサウェイをフォローする回 vol.2

 vol.1の続き

 ガンダムの世界ではニュータイプと呼ばれる、人智を超える能力を発揮する人達がいて、単に「勘が鋭い」程度の人から、テレパシーで会話してしまう人まで出てきます。  ファーストガンダムでは主人公のアムロがこのニュータイプ能力に目覚め、戦いの中でどんどんエライ事になっていきます。  で、一方敵方のジオン軍はこのニュータイプ能力をいち早く兵器に転用する研究を進めていて、ニュータイプの脳波を感知するサイコミュという技術を生み出し、これを制御するパイロットとして強力なニュータイプ能力を持つ少女ララァを戦場に送り込むのです。  しかし敵同士の筈のアムロとララァはその強力なニュータイプ能力が故に心を通わせてしまい、ニュータイプが世界に増えていけば、いつか人と人は分かり合えるという未来さえ見てしまう。  でもそこは、悲しいかな戦場だったというのがガンダムというお話なんですが、このニュータイプ能力を感知するサイコミュなるものを利用した兵器はその後のガンダム作品でも作り続けられ、逆襲のシャアではアムロの搭乗するνガンダム(ニューガンダムと読みます)にはフィンファンネルというマントの様な特徴的なものが装備され、敵を射つビームを出したりガンダムを守るバリアを張ったりと八面六臂の活躍をします。  で、このファンネルという装備が閃光のハサウェイでもクスィーGとペーネロペーの両方に搭載されていて、それがどんな風に描かれるのかをファンは楽しみにしてたんですよ。  実際、暗くてよく見えないながらもw、「おおぉ~」と思いながら見たファンは多かっただろうと思います。  「イヤ絵だろ!」とか言わないの!www  ちょっと面白いのは、劇中のハサウェイとギギの会話シーンで「ニュータイプなんていないって学校で教わっただろ」と言ってるんですよね。  この時代にはニュータイプはそういう扱いになっているという。  でもニュータイプ能力を利用した兵器は巌然と作られ続けているっていう。  戦争の闇の部分ですね。  まあそれ以前にヒロインのギギがもう「この娘どう見てもニュータイプじゃん」なんですけどね。  だからこそハサウェイは前作のヒロイン、クェスの面影を見てしまい…というところなのですな。  そういや閃光のハサウェイにも回想シーンでクェスが出てきて、勿論その声は逆襲のシャアと同じ川村万梨阿さんが演じてるんですけど、逆襲のシャアってもう30年とか前の映画で、川村さんはだから、もう50代後半の筈なんですけど、全く違和感なく10代半ばの少女の声でしたね。声優さんて化物ですねw  てな感じで、一本の映画としてはイマイチだったこの映画も、ファンという人種達はそれなりに楽しんでいて、サブスク解禁されると聞けば「映画館でよく見えなかったアソコをじっくり見返せる!」と喜んでたりするんです。(変な意味じゃないよw)  まだ観てない人もこのブログを読んで興味持ってくれる、こっち側に来てくれる事を期待してるのでここでも一応ネタバレはしない様に、でも興味は引こうとしてこんな内容の文章を書いてみた訳ですがw  閃光のハサウェイにはハサウェイ、ケネス、ギギの他にもう一人、マフティという人物の名前が出てきます。  ファーストガンダムでジオニズムという思想を根拠に地球連邦からの独立を試みたジオン公国、地球に暮らす人々アースノイドに対し嫌悪にすら似た感情を抱くジオニズムという思想を起源として始まった戦争の行く末に、アムロのライバルであるシャアは逆襲のシャアでいよいよネオジオン総帥となっていて、小惑星を地球に落下させて強制的に地球を人の住めない環境にしてしまおうと画策し、アムロ達はそれを阻止しようと奮闘する訳です。  そこから12年後の世界に現れたマフティなる人物。  地球連邦に反省を促すとして活動する、地球連邦側から言うとテロリストなのですが、民間からはある程度支持もされていて、彼をシャアと準える様な取り上げ方をするメディアもあるという様子が描かれています。  閃光のハサウェイの冒頭でいきなりこのマフティを名乗る人物がシャトルをハイジャックするのですが、このシャトルに乗り合わせていたハサウェイ、ケネス、ギギらによってハイジャック事件は解決し、この事件の取り調べ、事情聴取の為に同じホテルに逗留する事になるという流れとなります。  ハイジャック犯のマフティを名乗った男を偽者と看破したギギとの会話で、ハサウェイは「マフティは組織だよ。単独で活動してる筈がない。」と述べる訳ですが、その本物のマフティが何者で、何を思って活動しているのかというのがこの物語の根幹となっていきます。  そしてマフティと連邦軍の双方にモビルスーツを提供するアナハイムエレクトロニクスという企業の存在。  かつてはネオジオンと連邦の双方にやはりモビルスーツを提供し、シャアはライバルのアムロに、自分だけが性能の勝るモビルスーツで勝っても納得できないと新たな技術サイコフレームを秘密裏に連邦側にも提供します。  そして閃光のハサウェイでもクスィーGとペーネロペーの双方にやはりサイコフレームは搭載され、ライバル機として戦場で火花を散らす事になります。  既に次作の情報も少しずつ解禁されている閃光のハサウェイ。  次作にはいよいよハサウェイの父親ブライトも登場します。  ファーストガンダムの時代からアムロらと共に最前線を戦い抜いてきた伝説の軍人ブライト、しかしこの人物の声をファーストガンダムから担当してきた鈴置洋孝さんはもう亡くなってしまっていて、新たな声優さんが違和感なく演じてくれるかというのが、実はファンの心配事だったりもします。  いまだに水田わさびのドラえもんを認めてないですからね、我々世代w  最後に話が逸れちゃいましたがw、まだ観てない方、こっち側に来ませんか?  楽しいよぅ~  おしまい。

2021年10月18日月曜日

閃光のハサウェイをフォローする回 vol.1

  さて以前ここのブログで散々宣伝した「閃光のハサウェイ」、ご覧になった方はいますでしょうか。
 早いものでこのブログ原稿が公開されてる頃にはもうサブスク解禁されて、Netflix等でも観られる様になってるんですよね。

 俺は劇場で観たんですけど、ついうっかり4DXで観てしまいましてですね。(シンゴジラであんなに後悔したのにw)
 いやあ寒かったですね。
 いや、映画の内容じゃなくてね。
 まだ暑い頃だったのでポロシャツ一枚で観に行ったんですけど(いや、下は履いてますよw)、冷房の効いた劇場内で水飛沫や風の演出があるもんだから、物理的に寒かったんですw
 ホント、いらんわ4DX。

 で、肝心の内容の方はどうだったかって話なんですけど、嘘ついても仕方ないのではっきり言っちゃいますけど、ぶっちゃけ「一本の映画としては」イマイチでしたね。

 まあストーリー展開がそうなのはあらかじめ分かっていたし仕方ない所ではあるんですが、前作「逆襲のシャア」から12年経った世界がどういう状態になっているか、そして主人公ハサウェイ、そのライバルとなるケネス、そしてヒロインとなる謎の美少女ギギという人物たちの紹介的な要素が強くて、お話的に大きく展開していくのはここからというところで終わってしまいますからね。

 で、もう一つ、ガンダムなんだからロボット物という面、モビルスーツバトルの映像という部分がどうだったかっていう点なんですけど、この映画の戦闘シーンって二回あって、それがどっちも夜のシーンなんですよね。
 で、この映画、リアリティを追求した映像作りをしているんで、結果「暗くてよく見えねぇ」というw
 なので「もっかいじっくり観たい」と思ってたのでサブスク解禁は個人的にありがたいのです。(思う壺)

 とはいえ、閃光のハサウェイの原作小説は富野由悠季さんの最高傑作と推す人も多い作品なので、今後の展開を追う為にも今作は押さえておいて損はないと俺は思うんです。
 まあ、完結してから全部まとめて観るっていうのも手ですけどね。
 実は俺、エヴァンゲリオンの新劇場版はそのパターンで観ましたからね。
 シンエヴァ公開が延期された時に序破Qが全部YouTubeで無料で観られるようになったタイミングで三作観て、シンエヴァを劇場で観るっていう。それまで新劇場版は一切観てませんでしたw

 なんだじゃあ観なくていいやって事になりそうな言い方をしてしまったんですけどw、まあせっかくサブスク解禁される事だし、じゃあ俺みたいなモンが何を思って閃光のハサウェイを観たかっていう話をして、なんとか関心をつないでみようというのが、今回のネタです。

 先ずは、「これは劇場版逆襲のシャアの続編って事で良いんだよな?」という所が多くのファンの関心だったんじゃないかと思います。

 いきなり分かりにくい言い方してしまいましたね。
 わざとですw

 閃光のハサウェイの前作にあたる逆襲のシャアには、実は映画と小説の二作あって、先に映画が公開された後に小説が発売されているんです。
 で、ファンの間では小説版の方がスポンサーへの配慮等をせずに富野さんのの思うがままに書いた物であるとされています。

 小説版逆襲のシャアには「ベルトーチカチルドレン」というサブタイトルがつけられています。
 ファーストガンダムに続く2作目、Zガンダムにファーストガンダムの主人公アムロの恋人として登場するのがベルトーチカという女性なのですが、元々富野さんが考えたストーリーでは逆襲のシャアの時代になってアムロとベルトーチカの間に子供ができるという話だったのだそうです。
 が、当時のスポンサーに「ロボットアニメの主人公に子供ができるのはちょっと…」と言われて没になったというのが定説で(時代ですねぇ)、実際劇場版にはベルトーチカは一切出てこず、アムロには別の恋人が設定されてます。

 で、元々のアムロに子供ができるパターンで書かれたのが小説版という訳なんです。
 因みにこのベルトーチカチルドレン、コミカライズもされていてそっちも評判が良いので、小説を読むのは苦手という人は漫画で読む事もできますよ。

 で、ですね、このベルトーチカチルドレンという小説が発売された後に閃光のハサウェイの小説が発売されていて、これはやっぱりベルトーチカチルドレンの方の続編なんだろうと、ファン達は思ってる訳ですよ。
 だから今回映画として作られた閃光のハサウェイが映画版の逆襲のシャアの続編なのなら、そこに何らかの違いが出てくるのかなというのが関心どころだったんです。

 というのも、映画と小説の逆襲のシャアでハサウェイの仕出かす「とんでもない事」の内容が結構違うんですよ。
 という事は、その後に抱えるトラウマの内容だって映画と小説で違ってくるだろうと。ファンならそう考えますよね。

 ただ、結果ここは今作では特に触れられてなかったですねw
 長々と話しておいて何なんだよというw
 まあ、ここは今後どうなるかという部分という事で。

 で、もう一つ見処というのはやはりモビルスーツの描かれ方ですよね。

 ガンダムの世界ではモビルスーツは飛べないというのが今迄のところだったんですね。
 勿論引力のない宇宙空間ではプカプカ浮かぶ訳ですけど、地球の重力下では基本モビルスーツは重過ぎて飛べなくて、飛ぶ為には通称ゲタと呼ばれる飛行ユニット(正式名称もドダイだったりする。土台てw)に乗っかるか、モビルスーツ自体が飛行形態に変形する必要があったんです。

 ところで、以前ここのブログでガンダムの事を書いた時、ガンダムのSFのFの部分、フィクションに関してはミノフスキー粒子という架空の素粒子がだいたいその根拠を担ってるという話をしましたよね。
 巨大な宇宙戦艦が重力下をゆっくり飛べるのもミノフスキー粒子のおかげなんですよ、と。

 で、閃光のハサウェイの時代には、このミノフスキー粒子で重力下を飛ぶ技術がモビルスーツに応用できるぐらいまで小型化されたというのがメカ的な部分での見処な訳なんですよ。劇中ではミノフスキーフライトと呼ばれてますね。
 ただ、小型化されたとはいっても他のモビルスーツと比べるとまだ大きくて、一般的なモビルスーツがだいたい18メートルぐらいなのに対し、今作の主役機のクスィーGとライバル機のペーネロペーは30メートルぐらいあります。

 他のロボットアニメだと意外とホイホイとロボットが空を飛んでたりするんですが、ガンダムファンはこの閃光のハサウェイを観て「おお~、飛んでるよ~! カッケェ!」なんて喜んでたりします。
 ファンじゃない方からしたら「イヤ絵だろ!」って話なんですけどねw

 で、更にこのクスィーGとペーネロペーの武器、兵装の見処がファンネルというモノなんです。

 ガンダムというと、ロボットアニメの中で本格的なSFをやるという目標を掲げて作られたもので、地球を侵略者から守る勧善懲悪なんかではなく、人と人とが戦争をする話を描いた作品として、その後の所謂「リアルロボット物」の草分け的存在として語られる作品ですよね。
 で、リアルじゃない部分、SFのFの部分にもミノフスキー粒子なんてものを設定してリアリティを持たせてあると。

 でも実はガンダムにはもう一つリアルじゃない部分があって、それが端的に言うと超能力物という面です。

vol.2 へ続く

2021年10月4日月曜日

クトゥルフの呼び声

 

 さて、xenolithの裏話もひとしきりし終えたので、いつもの駄話に戻りますw

 で、何の話をしようかと考えたんですが、前回のブログでウチの作曲家先生oceanfrequencyが、口を開けば多元宇宙だの並行世界だのの話をし出しちゃうという話をしたので、今回はその手の話の総本山とでも言うべきクトゥルフ神話の話でもしてみましょうかね。

 記憶力の高い方なら覚えてるかもしれません。
 クトゥルフ神話の話をここでするのは初めてではないんですよね。

 以前ファンタジーの話をした時、英雄コナンというヒロイックファンタジーの金字塔的名作がクトゥルフ神話の世界観を使って書かれた物だと書きましたよね。

 その時の話の繰り返しになってしまいますが、クトゥルフ神話というのはH・P・ラヴクラフトという人物が100年位前に産み出した怪奇小説です。
 で、その内容というのがそれまでの既存の怪奇物とは一線を画すもので、抵抗する事も躊躇われる様な宇宙規模の邪神が登場して人々を狂気や悪夢の中に引きずり込むといったものです。
 で、その世界観をラヴクラフトだけでなく友人の作家仲間と共有して多人数でその設定や新作小説を作り上げていったという物なのですね。

 ただ、その小説というのは当時、雑誌に連載されているだけで一部のファンしか読めない物でした。
 ラヴクラフトは1930年代半ばで亡くなっていて、彼の死後、仲間の作家達がその作品群をきちんとした形で出版しようと活動しますが、大手の出版社には相手にしてもらえず、殆ど自費出版の様な形でアーカムハウスという団体を作って細々と活動していました。
 ラヴクラフトの作品だけでなく他の作家が書いたクトゥルフ神話の小説もここで発表されていたんです。
 アーカムという街の名前や、絶対に読んではいけない魔書ネクロノミコンなんてのは、クトゥルフ神話が由来なんですよね。

 で、という事はつまり、ラヴクラフトの怪奇小説よりも先に、その世界観を使って書かれた英雄コナンというファンタジー小説の方が世間一般に知れ渡る形になったんですね。
 コナンは大ヒット作品で、コナンの作者のハワードもやはり1930年代半ばに若くして亡くなっている作家なので。

 クトゥルフ神話が世に広く知れ渡ったのは1970年代に入ってからで、イギリスのライターがファンタジーの世界を体系化する本を出版した中にコナンのルーツとして紹介していて、それがメジャーの出版社の出版物に初めてクトゥルフ神話の事が載った物だったそうです。

 だから、ファンタジーの世界にはコナンの影響で、クトゥルフそのものではなくてもその世界観に近いものが当たり前に広まっていて、俺が中学生の頃に夢中で読んでいたムアコック作のエターナルチャンピオンサイクルというシリーズも、多元宇宙を転生して宇宙の均衡を乱す神々を倒すなんて話でした。
 小説だけに留まらずコミックやゲームにも、そういう物は多いですよね。

 そういった世界観と共にクトゥルフでもう一つ特徴的なのが、その設定をシェアして誰が新作を書いても良いというところで、この文化が後に意外な広がりを産み出すんですよね。

 クトゥルフというと、「え、小説なの?」と思う人もいるかも知れません。
 TRPGじゃないの?っていう。
 で、一方で「TRPGて何?」という人も多いですよね。

 TRPGというのはテーブルトークRPGの略です。
 RPGはロールプレイングゲームの略だというのは分かりますよね。

 まだビデオゲームというものが生まれる前、ゲームブックと双六のあいのこみたいな形のRPGが作り出されているんです。
 ゲームマスターという進行役がシナリオを読み上げながらプレイヤーを誘導する形で冒険が進むもので、プレイヤーは様々な選択をしながらモンスターを倒したりお宝をゲットしたりするんです。
 戦ったりする時はサイコロを使ってダメージなんかを出すんですよね。
 サイコロというと立方体、六面のものを連想すると思うんですけど、もっと色んな多面体のサイコロがあるんです。
 「人志松本のすべらない話」で語り部を決める時に転がしてるヤツ、あんな感じのですね。
 で、普通に剣で戦う時は六面のサイコロ一個しか振れないけど、火に弱いモンスターに火の魔法を使う時は12面体を振って良いとか、途中こっちのダンジョンに寄り道して特定のアイテムをゲットしてればサイコロを二個振って良いとか。そういう遊び方をする物です。

 このTRPGという物を世に広めたのがダンジョンズ&ドラコンズ、通称D&Dというファンタジー作品です。
 70年代に発売されだしたので勿論ファミコンとか無い時代からあるもので、内容は指輪物語やコナンみたいな王道ファンタジーものでして、という事は当然クトゥルフの影響も入っているんです。
 シナリオや、キャラクターの小さなフィギュア(双六の駒の様なもの)が色々発売されたんですけど、面白いのは発売されたシナリオを遊び尽くしちゃったマニアの間でオリジナルのシナリオを作り出す人達が出てくるんです。
 ここにクトゥルフの文化、誰が書いても良いというのと共通するものが生まれるんですね。

 で、D&Dはファンタジーなんですが、TRPGのシナリオとしてクトゥルフも出るんですよ。
 クトゥルフって怪奇ものなので、モンスターと戦うというよりは悪夢の様な世界から逃れる脱出ゲームといった感じです。
 で、勿論TRPGなんだしクトゥルフなので、これもオリジナルのシナリオを誰が書いても良いという文化なんですね。
 だから今YouTubeでクトゥルフと検索すると、小説のクトゥルフよりもTRPGで遊んでる動画が沢山ヒットして、その中にはオリジナルシナリオのものも多いんですよ。
 ちゃんと恐いものからギャグに走ったものまで色々あるので、皆でワイワイ遊んでる動画が再生数を伸ばしていて、だからそっちでクトゥルフというものを知ってるという人も多いんですね。

 多元宇宙だの並行世界だのなんていうマニアックなものの筈のクトゥルフ神話が、いつの間にか皆でワイワイ遊べるゲームとして普及するという広がり方をしちゃってるんですね。

 意外な所にクトゥルフの影響が見えるものというと、ディズニーの映画、パイレーツ・オブ・カリビアンですかね。
 クトゥルフの最初の作品、「クトゥルフの呼び声」で、大昔に地球を支配していて現在は海底に封印されている旧支配者クトゥルフ神の容姿が描かれているんですが、その姿は巨大で鱗に被われた体に手足に鉤爪、背中に蝙蝠の様な羽根、頭は蛸の様で、口があるべきところに蛸や烏賊の様な触手が無数に生えてるというものです。
 この「口に触手」というビジュアルがパイレーツ・オブ・カリビアンのキャラクター、デイヴィ・ジョーンズに現れてますよね。

 そしてクトゥルフ神話の影響がガッツリ出ているもので大ヒットしたと言えば、Netflixのドラマ「ストレンジャーシングス」ですよね。
 超能力を持った子供が集められた施設にいた少女が並行世界との扉を開けてしまい、この世ならざる化け物がこちらの世界に現れてしまうというモロにクトゥルフっぽいお話で、それプラス80年代前半という舞台設定が俺らオジサンには「懐かしい~!」ってなるっていう、もう凄ぇ面白いドラマです。
 主人公の少年達はD&Dを夢中になって遊んでいるという、もう作り手の趣味モロ出しで、少年の一人が並行世界の巨大な化け物に悪夢の中で操られそうになり、その化け物の話を聞いた他の少年達が「デモゴルゴンだ!」と言い出してD&Dの設定資料を開いて「ほらコレ!」と指差した所に描かれているのが「イヤこれクトゥルフ神やんけw」ってなるっていう、お話面白いプラスマニア心をくすぐりまくる内容なので、Netflixに加入しててまだ観てないという方は是非観てみてください。
 現在シーズン3まで公開されてて、シーズン4が今制作中で、最近そのシーズン4のトレーラーが公開されたんですが、俺は観ない様にしてますw
 事前情報は入れない状態で観たいもん。

 あとは、現代版クトゥルフとも言うべきSCPなんてのもありますが、SCPについて語り出すとまたここのブログ一本分でも足りないぐらいですんで、それはまた別の機会にしましょうかね。

 という事で、ホントはまだまだ全然語り足りないクトゥルフのお話、ちょっと興味が湧いたりしたでしょうか。
 とりあえずストレンジャーシングスから観てみて、面白いと思ったら色々検索してみて知識を広げていくというのでも良いんじゃないですかね。

 今回はこの辺で。

 おしまい。

2021年9月20日月曜日

xenolith

  前回のブログで「実は以外と大雑把なヴォーカルパートの話」を書いたら、oceanfrequencyさんから「間違いだらけ」と言われましたw

 なんでも、オートチューンという、歌ったそばから音程を補正するソフトは使ってないものの、レコーディング済みの音声データは事後にoceanfrequencyさんがちゃんと補正してるんですって。
 oceanfrequencyはcubaseというソフトで音楽制作、編集をしているんですが、その中にヴォーカルを補正できる機能もあるんだそうで、それを使ってるんだそうな。
 てことで、大雑把なのは俺だけだったらしいw

 俺は自分のリズム感がうんこちゃんなのは把握してるので(wallのサビの拍の頭に付点16分休符があるところはNG出しまくりましたw)、そこは補正されてるんだろうとは思ってたんだけど、音程も直されてたのねw
 ていうか、じゃあ俺が「もうちょっと上手く歌えた」と思ったparadoxのAメロは、補正してアレって事なのね。
 ありゃ、じゃあ俺、ギターだけじゃなく歌もポンコツなのか?
 すんません、もう引退しますw

 そんなこんなで、そろそろxenolithの裏話も底をついてきました。

 今回のアルバムは明確なテーマに沿って作られたものですが、実はこのテーマについてoceanfrequencyから俺に告げられたのはわりと後半でした。

 俺は途中までそういうテーマでアルバム全体を統一しようという意思があると思ってなかったので、制作途中で「なんか同じ様な歌詞ばかりじゃない?」「もっとこう、『お休みの日に美味しいクロワッサンを買いに、ちょっと離れたパン屋さんに出掛ける』みたいな歌があっても良いんじゃない?」なんて言ったら、oceanfrequencyから「いや、今回のアルバムのテーマがコレだから。」と初めて教えられて、「あ、そうだったんだ。」ってw

 それでも歌詞に使われるワードが似たようなものになってきてるとは感じたので、谷川俊太郎さんの詩集をプレゼントして、「パクっちゃいなよ」とけしかけたりもしたりw

 cycleという曲もあるので今更秘密でも何でもないのですが、このアルバムでは「転生」が描かれています。
 まあ別に仏教の思想に傾倒してる訳ではないんですけどね。

 oceanfrequencyは、すぐに多元宇宙だの並行世界だのの話をし出しちゃう人で、それは彼のホームページに書かれている文章や、xenolithの予告画像なんか見ても明白で、今回のアルバムにもorbitという曲が入ってたり「マルチバース」という歌詞があったりと、いわば集大成みたいなところがありますよね。
 結果的には上手く出来たと思ってますけど、そろそろもう良いかなw
 だってさ、よくよく考えてみればファーストアルバムが「月の舟」でセカンドアルバムが「cosmic tree」なんだから、ずっと宇宙なんだよw
 次のアルバムに向けての曲がまた宇宙ネタだったら、流石に「いや、もうええっちゅうの」と言うと思います。
 あ、でも俺引退するんだったw

 まあ冗談はさておき、oceanfrequencyという人の持つ優しさが感じられるアルバムに仕上がっていて、実はわりと真面目に気に入ってるんです。
 そのアルバムのお手伝いができて、良かったかな、と。

 なんだろうね、あと小ネタとしてはraceに入ってるマイケル風シャウトは「コレは使わなくても良いけど、一応録っておこう」と俺がふざけ半分でレコーディングしたんだけどoceanfrequencyがコラージュネタとして採用していて、「あ、使ったんだw」ってなった事とか。
 troisの歌の1行目は露骨に福山を意識して歌ってる、とか。
 wallのギターソロはバックトラックのキーはG♭なのにA♭の音階で弾いてるんだよ、とか。
 troisのギターソロではエレクトロハーモニクスというメーカーのアタックディケイというエフェクターを使ってるんだよ、とか。

 もう良いかなw

 そんなこんなで出来上がったxenolith、皆様今一度お聴きになってみてはいかがでしょうか。
 何しろ再生回数がお金…

 いや何でもないw

 おしまい。

2021年9月6日月曜日

実は意外と大雑把なヴォーカルパートの話

  前回はギターの話中心だったので、今回は歌の話をしていきましょうかね。

 アルバムを聴いていただければお分かりかと思いますが、oceanfrequencyの作る曲というのは流行りとは無縁の音楽ですね。
 と言うか、oceanfrequencyという人が、流行りの物を聴いたり分析したりしないからねぇ。(俺が知らないだけでしてたりして)

 なので音像が所謂「今時の」という感じでないのは、まあそうなんですけど、歌に関しても今時珍しい点がありまして。

 cunoの音楽では、オートチューン等のヴォーカル音程補正を使ってないんですよ。

 音楽制作に全く興味の無い方だと「え、そんなの使うモンなの普通?」と思うかもしれませんが、音楽制作の現場どころかYouTubeに「歌ってみた動画」を上げてるそこら辺の歌い手さんですら、今や普通に使ってるんですよ。

 別に、俺は歌が上手いから必要ないんだぞなんて言うつもりはなくて、多少音程がズレてても気にしてないというだけですw
 歌ってみて聴き返してみて、「これはちょっと」という場合は歌い直す。それをただただ繰り返して作っているだけなんですな。
 ギターと同じく、録音データを削除するのなんて一瞬ですからね。

 俺はかなり声を震わせて歌うタイプで、これはビブラートを掛けてるというよりは自分にとって楽な歌い方をしてるだけでして、本当ならこの「震え」を均一に揃える様に気を付けて歌うべきなんでしょうけど、聴き返してみてそこまで酷くなければ「良いんじゃね?」みたいなノリでやってますw
 音程的にも譜面通りに音符の頭にパンパンと当てていくというより、わりと遅れて合わせていくんで、早いパッセージのメロディとか苦手なんですけどw、これも聴き返してみて問題無い範囲であればOKぐらいの感じなんです。

 なので出来上がってから「もうちょい上手く歌えるなコレ」と思うものもなくもなかったりもするんですよね。
 今回で言うとparadoxのAメロとか。
 こういうのは補正ソフトを使ってれば起こらない事なんですけど、まあ良いんじゃないですかね。その方が生々しいし。

 但し、その「俺にとって楽な歌い方」じゃ駄目だった曲があって、それがアルバムラストの曲のmodestです。
 この曲、いつも通りに歌ってみて、一度「よし、出来た」と思ったんですけど、後で聴き返してみたら「この歌い方じゃヨレヨレに聞こえるな」と思ったので録り直したんですよ。なるべく声を震わせない様にして。
 聴いてる人からすると一番平坦に歌ってる様に聞こえる筈で、ひょっとしたら楽に歌ってる様に思えるかもしれないですけど、俺にとっては結構チャレンジでした。

 そんな感じで生々しさを存分に堪能いただけるメインヴォーカルなんですが、コーラスはガッツリハーモナイザーを使ってます。(オイ)

 cunoの曲って、俺がデモ音源を貰った時点ではハモりの部分は入ってないんですよ、ほとんど。
 で、俺が歌を入れた状態をoceanfrequencyがバランス調整等してみて、厚みが必要と感じた所にコーラスを足すんですけど、そのコーラスパートをいちいちデモ音源制作して俺に送って、それを俺が覚えてレコーディングしてという手順を踏んでたら膨大な時間が掛かっちゃうんで、oceanfrequencyがデスクトップ上でチャチャッと作っちゃってるんですよね。
 なのでハモりパートは全然生々しくないですw
 cunoの曲に、よくある「ウゥ~」とか「ハァ~」みたいなコーラスがないのもこういう理由です。

 とまあこんな感じで作ったアルバムなんですが、アルバムの最後の最後、modestの締めくくりに俺が生歌でハモりを入れてる箇所があるんですよね、実は。
 しかもコレ、珍しく俺のアイデアなんです。

 先ず、最後からいっこ前の所、「君と僕の歴史さ」というフレーズをダブルトラック、つまり全く同じメロディを2回重ねてあります。ちゃんと2回歌って。
 まあシンプルにその方が良い感じになりそうだと思ってやったんですけど、結果的にアルバムのコンセプトとかラブソングという曲の意義といった点でも良かったかなと。整合性が出ましたね。

 で、その次、ホントに最後のフレーズ「xenolithに歓び満ち 愛を貫いて」という所に、oceanfrequencyが作ったメロディとは別のメロディを重ねて歌っています。
 このメロディ、俺はあくまでもコーラスパートと考えて歌ったのでハイトーンの所をガッツリファルセット(裏声)で歌っているんですけど、oceanfrequencyがこのメロディを気に入ったみたいでメインのメロディの様にミックスしたんですよね。
 俺はcunoの曲で主メロでファルセットは殆ど使ってこなかったんで、なかなか珍しい事になってるんですけど、アルバムの締めくくりに特別感があるみたいな感じで良いのかなと思ってます。

 こんな感じで出来上がったxenolithですが、どうでしょう、過去のアルバムと比べてヴォーカルパートが聴き易くなったと思いませんか?
 コレ、今回のアルバムからヴォーカルマイクが変わってるからなんですよ。
 今まではダイナミックマイクを使ってたんですけど、今回からはコンデンサマイクを使ってます。
 簡単に言うとダイナミックマイクというのは電源無しで使えるマイクの事で、マイクの中に入ってる薄~い紙が耳の鼓膜の役割をしてるんですけど、声(音)が作り出す空気の振動をそのまま正にダイナミックに使うものでして。
 で、コンデンサマイクは電源が必要な分、よりセンシティブに音を拾ってくれるという物なんです。
 機材はoceanfrequencyがシコシコと買い揃えています。
 もしかしたら次回作はオートチューン使ってたりしてね。

 今回はこんな感じです。

 おしまい。

2021年8月23日月曜日

ギタリストを募集した方が良いかもしれない人達

  xenolithがサブスク解禁されて一月程経ちましたが、このブログを読んでる方なら一度くらいはお聴きいただけたでしょうか。
 まあ、聴いてなくても驚きませんけどね。
 俺も学生時代、デーモン小暮(現デーモン閣下)や大槻ケンヂのオールナイトニッポンを聴いていたけど、聖飢魔IIや筋肉少女帯のCDは一枚も持ってないもんw

 しかし構う事無く、今回もxenolithのお話。
 いきなり訂正というか前言撤回スタート。

 前回ここのブログでラブソングのギターソロを「よく覚えてない」と書きましたが、聴いてるうちに思い出しました。

 cunoのレコーディングの手順って、先ずoceanfrequencyが曲と詞を作って、カラオケ状態の音源をCD-Rに焼いた物と、詞をプリントした紙を俺ん家に届けてくれる。
 それで俺が曲と詞を覚えてレコーディングという事になるんだけど、ギターソロを入れて欲しい場合は詞の書いてある紙の所定の場所に「ギターソロ」と書き込んであるの。
 で、俺はCDを聴いてソロを入れる場所とか尺とかキーなんかを確認して、どんなソロを弾くか考えていくんですね。

 俺の場合、メロディを考えるというよりは指使いで考える。
 「最初にコレをやって、次コレで、コレで締めくくろう」みたいな感じで、一音一音決めるというよりは流れを考える感じなんですよね。

 そんな感じでラブソングのソロも流れを決めてレコーディングに臨んだんですけど、当日実際に弾いてみたら、尺に収まりきらなかったんですよw
 何故か俺、実際の尺より長いソロを考えていってしまったんです。
 なので現場で「じゃあコレとコレは省いてコレとコレとコレだけにしよう」みたいな感じで短縮バージョンに組み換えて弾いたんでした。
 すっかり忘れてましたw

 まあ、以前も書きましたけど、俺はギタリストとしてはへなちょこなので出来る事は限られていて、しかもその出来る事のヒキダシを前のアルバムの「ghost in the castle」という曲で全部開けてしまってるのよね。
 なのでもう、基本使い回しなんですよ、フレーズの。
 例えば、このラブソングのソロの最初と、その三曲後に入ってるdiscoveryって曲のソロの最初、殆ど同じ事やってますよね。
 曲調がメジャーとマイナーで違うけど発想はほぼ同じで、要するに「早いパッセージのフレーズで始めよう」という事。

 ちなみにこのdiscoveryのギター、事前に良いフレーズが全然浮かばないままレコーディングに臨んでしまった曲で、当日無理矢理捻り出したんですけど、イントロのソロだけで70テイク以上かかっちゃいましたw
 弾いてみては「違うなぁ」だの「間違えて変な音出しちゃった」だのやってデリートしてを繰り返してたら、oceanfrequencyから「70テイク越えました」ってw
 で、アウトロのソロも30テイク以上かかったから、計100テイク以上弾いてるのw
 アウトロではタッピングというテクニックを使ってるんだけど、コレって俺の中では「逃げ」なんですよね。
 タッピングって派手で早いフレーズが弾けるんだけど、実は凄い簡単なんですよw
 初心者でも直ぐ出来るヤツなの。
 「もうなんも思いつかん。タッピングでイイや。」っつって弾いたヤツなの。ナイショだよw

 もうこんななんですよ、俺のギター。
 もういっこバラしちゃうと、一曲目のlullabyって曲のソロなんてディープパープルのスモークオンザウォーターのリフのアレンジですからねw
 ギター弾く人ならすぐ分かると思いますけど。
 以前ここのブログでスモークオンザウォーターは格好いいハードロック曲じゃなくてコミックソングみたいな曲と書いたクセに、その曲をパクるというw

 て感じで、俺のギターに多くを期待してはいけないんですけど、今回実はoceanfrequencyさんからドエライ無茶振りを食らいましてですね。

 raceという曲がzenolithには入ってますが、コレ本当は元々全然違うタイトルで、「アルバムにインスト曲を入れたいから、このオケに合うギターを作曲して」と、約4分のデモCDを渡されたの。
 ウン、無理ですw
 あ、インストというのはインストゥルメンタルの略で、要するに歌の無い曲の事です。

 以前にも書いた通り、俺は作曲とか出来る人じゃないんですよ。
 しかも貰ったタイトルというかテーマも、あんまり自分に馴染みの無いものだったモンで、幾ら時間を貰っても全然出来なかったんです。

 で、結局oceanfrequencyに正直に「出来ねぇっすw」と申告して、何個か思いついた使えそうなフレーズを録音して、それをoceanfrequencyのセンスで切り貼りして曲をでっち上げという、所謂コラージュ的な方法で行こうという事になったんです。

 て、その使えそうなフレーズを録っていたらoceanfrequencyが「なんかレースって感じがしてきたな」と言い出して、その場で急にレースの曲になったんですよw
 じゃあって言ってスリップストリームだのサイドバイサイドだのといったレース関連の言葉も録って、それもコラージュの素材に使ってもらって、で、ああいう曲になったの。
 俺のギタリストとしてのへなちょこさが産んだ曲なんですね。
 まあこれで、もうoceanfrequencyも俺に作曲しろとか無茶を言うのは諦めてくれるでしょう。てか、諦めてくださいw

 こうして出来上がったraceなんですが、出来上がってリリースしてしまってからあれこれアイデアが出てきてしまって、ちょっと反省も残ってる曲です、個人的に。
 結構その場のノリで作っちゃったんで、後から言葉の部分を別のマイクで録れば良かったなとか、エフェクトのかけ方もレース会場の場内アナウンスっぽい感じとか、テレビ中継の実況みたいにしたりとか、あと声をピッチシフターで音程変えるとかして、コラージュ感をもっと強く出した方がソレっぽくなったんじゃないかなぁ。

 まあこの辺は今後に活かせれば良いかなと思います。

 て事で、今回はギターが下手な人の言い訳コーナーでした。

 まだxenolithの裏話は幾つかあるので、次回に続きます。
 聴いてねxenolith。

 おしまい

2021年8月9日月曜日

ラブソング

  


前回の予告通り、YouTubeにxenolithからの2曲目のPV、「ラブソング」を公開しました。(oceanfrequencyがw)
 折角ですので今回はこのラブソングのエピソードを。

 聴いていただいて、出来れば軽く口ずさんでいただくとお分かりいただけると思うんですが、この曲はキーがバカっ高いんですよ。
 しかも歌い出しからいきなり高い。
 なにしろクリスタルキングの「大都会」より高い音が出てきますからね。

 だもんだから、俺はある程度緊張感を持ってレコーディングに臨んだんですよ。「今日の曲、いきなり高いんだよなぁ…」って。

 なのにね、ウチの作曲家先生ったら、レコーディング準備の作業しながら、すげぇ気の抜けた言い方で「今日高い所あった~?」って聞いてきたんですよ、歌う前の俺に
w

 もうね、2秒位黙りましたよね。「…???」って。
 で、「た、高いよ?」って言って、軽く歌ってみせたら「ホントだ。cuno史上一番高いんじゃない?」だってw
 アンタ、自覚無しで作っとったんかい。

 なんかどうもね、あの人は未だによく分かってないフシがあるんだなぁ。
 鍵盤の位置で「ここまでは出せる、使える音」と思っていて、そこまでなら幾らでもコントロール可能ぐらいな意識で作曲してるみたいなの。
 こっちは人の身体という「柔らかいモノ」をコントロールしていて、人が動くというのは勿論、すべからく筋肉を使った行為なんだからさ。鍵盤を押すと音が出てくる楽器とは違うんですよw
 しかも、年々年老いていってるオジサンな訳w
 実際この曲は一度目のレコーディングでは納得いくテイクが録れずに、後日喉の調子の良い日に録り直して完成してるんですよ。

 そんな苦労をして出来上がったラブソングなんですが、どうでしょう、パッと聴いた感じ、そんなに高いキーの曲に聞こえないとは思いませんか?
 クリスタルキングの「大都会」より高いと聞いて、意外に思った方もいるかも知れません。
 クリスタルキングの人の声ってガツンと強烈に来るから、聴くと「うぉっ、スゲェ」ってなりますもんね。

 これは俺の声質の特徴というか、自分で「損な声質だなぁ」と思う点なんですけど、俺の声って良く言えばマイルドで温かみのある声と言えるかもですけど(自分で良く言うな)、鋭さには欠けていて前に出てこない感じなんですよね。
 歌ってる時はメチャメチャ必死で歌ってるのに、出来上がったのを聴いてみると何かそんな感じしないんだよなぁ。頑張ってるんだけどなぁw

 あと、この曲の終盤に入ってるギターソロの事、よく覚えてないですw
 深く考えずに「こんな感じでどうかな」って弾いてみたのがスンナリ嵌まったパターンだったんだと思います。短いしね。

 そっちよりも中間に入ってるロングトーンのギターの方が苦労した記憶がある。
 アレってE-BOWサスティナーっていう物を使ってギターの弦を振動しっぱなしにしてるんですけど、左手で音程を変える時に音が途切れてしまったりして何度かテイクを費やしたんだったと思います。

 そんなこんなで出来上がったラブソングなんですが、さて、何故この曲のタイトルは「ラブソング」なんでしょう。

 お気づきでしょうか。
 xenolithに収録されている曲は全て、アルファベット表記で1ワードのタイトルとなっています。
 この曲を除いて。

 この曲の中にも「まち」が出てきますが、この「まち」はxenolithなのでしょうか?
 ちょっと違う雰囲気がします。

 実はこの曲は、xenolithというコンセプトとは「そぐわなさ」があるという事でアルバムから外されそうになったり(必死で歌ったのにw)、タイトルを「song」に変えられそうになったりと、紆余曲折あった曲だったりします。

 なんですけど、結局収録に至りました。
 それも、この曲だけ片仮名タイトルという特別な役割を持って。
 と言うか、それを可能にするアイデアを見つけたという方が正確かな。
 xenolithというアルバムのコンセプトに上手く当て嵌める事が出来ました。
 頑張って歌ったのに没にならなくて良かったw

 まあ、もう一つ、片仮名でラブソングだと検索に引っ掛かり易いんじゃないかっていうイヤらしい計算が無かったかっていうとゴニョゴニョ…(オイ)

 という感じで、今回はラブソングの裏話的な事を書いてみました。
 今後もxenolith裏話をちょこちょこ出していこうかなと思います。

 聴いてね、xenolith。

 おしまい

2021年7月26日月曜日

遂に出た!

 

 はい、そういう訳で、我々cunoの3rdアルバム、「xenolith」が各種サブスクで聴ける様になりました。
まだ出来ないまだ出来ない言っといて、出来上がってみれば全14曲、トータル65分というまあまあの大作になってしまいましたよ。

 俺はxenolith(ゼノリス)という言葉を知らなかったのでoceanfrequencyに聞いてみたんですけど、教えてもらっても「?」という感じだったりします。実は。陽水さんに「パンダって白いでしょう?」って言われた民生さんの気持ちが少しわかったw
 いや、勿論お聴きいただければこのxenolithというのが架空の街、都市の名前である事は直ぐに理解できると思うんですけど、この都市の名前にxenolithという言葉をチョイスした理由は多分oceanfrequencyにしか分からない。本人にはちゃんとした理由があるんでしょうけど。
 まあ皆さんも聴いてみて、またxenolithとは何なのか調べてみて、色々類推してみてください。

 完成までにそこそこ時間がかかったアルバムなので、それなりにエピソードみたいな物もいくつかあるんですが、折角だから小出しにしていきたいと思いますw

 今回は1つだけ、実は俺が勝手にやった事で、まだoceanfrequencyにも話してない、oceanfrequencyもこの原稿を読んで初めて知る事を書きます。

 「wall」という曲のギターソロを弾いた時の事なんですけど、我々cunoのギターパートのレコーディングってライン録音なんですね。
 アンプを実際に鳴らしてそこにマイクを立ててその音を録音するのではなく、マルチエフェクターに入っているアンプシミュレータを使って、「アンプを鳴らしてるかの様な音」を作って、その音をケーブルでそのまま機材に送って録音してるんです。
 で、そのエフェクター、アンプシミュレータのセッティングは俺がやっているのでoceanfrequencyはどんなセッティングなのかはあまり知らないんですけど、この「wall」という曲のギターソロでは、ちょっと変な事をやってみているんですよ。

 普通ギターって、ギター本体からケーブルでアンプに繋ぐ途中にエフェクターを挟むんですよ。
 ギター本体の音をエフェクターで加工して、それを最終的にアンプで鳴らし、それをマイクで拾って録音する物なんです。
 でも、「wall」のギターソロでは、アンプシミュレータの後にファズというエフェクターを掛けるという事をやっています。
 ファズというのは元々は、大きい音を出しすぎてスピーカーが破けてしまった時の音をシミュレートしたエフェクターで、所謂歪み系のエフェクターの中でもかなり強く歪む、掛け過ぎると「モー」とか「ブー」みたいな音になっちゃうエフェクターなんですね。
 これを「アンプを鳴らしたかの様な音」の後から掛けてるんです。
 これはデジタルの機材でライン録音してるから出来るセッティングなんですよね。
 こんな事を、oceanfrequencyに黙ってこっそりやってましたw

 今後もこういった、xenolith制作秘話みたいな物をこの場で発表していけたらなと思います。

 あ、因みにYouTubeではxenolithの予告映像、「utopia」という曲の1コーラスのみのショートバージョン、アルバムのダイジェスト映像とxenolithがらみの映像が三つ出ていますが、近日中にまた何か出るらしいですよ。
 是非cunoのYouTubeチャンネルもフォローしてくださいね。
 よろしくお願いします。

 今回はこの辺で。

 おしまい

2021年7月19日月曜日

cuno - xenolith 公開までの道のり

それは、一つの噂から幕を上げた。

それがこれだ


 



そして、cunoの登場がアナウンスされた。

次のアクションは、先ほどのアナウンスよりほどなくして行われた。

それが、utopia (short ver.) の動画のアップロードだ。

cunoのoeanfrequencyによる動画作成により、YouTubeにアップロード。

からの、翌週にはcunoのアルバムxenolithのtrailer...そう、予告編がYouTubeにアップロードだ。

 
 
電光石火。そこから次に仕掛けたのは、「cuno - xenolith」のアルバム公開だ。
 

そして...
 


 cuno - xenolith(dijest)の動画のアップロード。
ただの噂でもない。これが真実。
cuno 3rd album 「xenolith」が、2021年7月16日に正式リリースとなった。

サブスクとホームページで全曲解禁でダウンロード可能。
サブスク ⇒ https://linkco.re/RCn81hCR?lang=ja
HP ⇒ https://www.oceanfrequency.com/cuno

もしよろしければ、チェ~ックしてみてください。

2021年6月28日月曜日

CAN YOU CELEBRATE? vol.2

vol.1の続き

 あとねぇ、歌詞全体を見ると、「色んな恋愛をしてきて良かった事も、上手くいかなかった事もあった」的な部分もあって、それも「運命の相手に漸く出会えた」という事を言いたいんだろうけど、過去の別の男との話をしてる歌を結婚式で流したり歌ったりするのってヤベェよなw
 それは御法度だろうと。

 でもって、一番盛り上がる大サビの歌詞が「訳もなくて涙溢れ」って、「て」いらねぇだろっていう。
 そこは「訳もなく涙溢れ」でないと日本語おかしくない?ってなっちゃう。
 そこはメロディより言葉を優先しなきゃ駄目だと思うのよね。
 ほら、サザンオールスターズの愛しのエリーでも「言葉に詰まる様じゃ恋は終わりね」ってところでメロディを崩して歌詞を優先させてるけど、変どころかむしろ良いフックになってるじゃない。
 「訳もなくて」と言って「え? いやいや…」と思われるよりも、メロディを変えてでも「訳もなく」にすべきだと、俺は思うなぁ。

 それからこれは、ヘンというより珍しいという点なんだけど、この曲って所謂Aメロとサビの繰り返しで基本構成されてるんですよね。
 小室哲哉の作る曲というと先ずはいきなりサビから始まって、Aメロがあって、そのAメロを加速させる、盛り上げる様なBメロに行ってからサビで転調するというのがもうテンプレなんですけど、この曲はそれが無い。
 これも邪推してしまうと「良いBメロが思い浮かばなかったんじゃないの?」なんて思えたりもする。
 いや、これは幾らなんでも意地悪過ぎるかな。

 とまあ、色々違和感のあるこの曲、俺は前述した通り初めて聴いた時からおかしな曲としか思えなかったんだけど、世間一般的には「感動の名曲!」という扱いになっていて、何だかなぁとずっと思ってたんですよね。

 更に言うと、安室奈美恵自身の歌も良くない。
 この曲がというより、この時期の安室ちゃんの歌は良くないよね。
 発声もピッチもイマイチで、気持ちがこもってる様に聞こえないの。仮り歌のままリリースしちゃったみたいに聞こえる。

 これって当時の安室奈美恵や小室哲哉を取り巻く環境がそうさせたんじゃないかと、どうしても邪推してしまうよね。
 出す曲出す曲次々にヒットしていった所謂小室サウンド。そうなると大概の曲がタイアップという事になってくる。
 そうすると、ここのブログで大分前にレッドウォーリアーズについて書いた時にも触れたけど、締め切りというモノに追われながら曲を制作する羽目になっちゃう。
 小室哲哉も安室奈美恵もライヴやTV出演なんかもこなしながらとんでもなく多忙な中で音楽を作っていく訳で、歌詞をじっくりと練る時間も無かったり、その歌詞をしっかり解釈する暇も無いまま妥協して世に出した様なモノもあったかもしれない。
 でも、そんなモノでも出せば大ヒットになっちゃうのか当時の小室サウンドというモノだったのですよ。

 やってる当人達としたら「この程度のモノでも世間は大喜びなんだ」と、半ば真面目にやるのが馬鹿馬鹿しく感じてしまっても無理無いよなぁ、なんてね。
 言ってしまえば、天狗になってもおかしくないんじゃないかという。
 その後の小室哲哉がどうなったかは、皆さんご存知の通り。

 でさ、この色々ヘンな曲であるCAN YOU CELEBRATE?をね、「感動の名曲」としちゃう人達ですよ。
 結局ちゃんと聴いてないんじゃないの? 安室奈美恵と小室哲哉が作り上げた曲という「記号」に踊らされてるだけじゃん。

 実は一番気になっちゃうのはココなんだよなぁ。
 レッド・ツェッペリンやクイーンやニルヴァーナを矢鱈神格化したがる人達とかさ。
 そりゃ素晴らしいものである事は間違いないとは思うけど、音楽以外の部分のセンセーショナリズムというところで評価してしまってるのはねぇ。
もっと言うと、ゴッホの絵画とかね。ホントに良いと思いますか?っていう。
 因みにゴッホの絵画は、ゴッホの亡くなる前には一枚も売れてなかったりするんですよね。

 と、最後に毒を吐いてしまいました。スンマセン。

 おしまい。

2021年6月15日火曜日

CAN YOU CELEBRATE? vol.1

  さて、ここのブログはもう俺が好き勝手に雑文を書き散らす場所になってしまってますが、漸く近々音楽ユニットの公式ブログらしい事がお知らせできそうな気配がして参りましたよ。
 できれば、我々cunoのFacebookをフォローしておいていただくと、更にいち早く情報がお届けできると思いますので、是非ともそちらの方も宜しくお願いいたします。
 
 て事で本題。

 安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」。言わずもがなの名曲で結婚式の定番ソングと、世間ではされています。
 でもね、俺はこの曲、初めて聴いた時から「ヘンな曲だな。」って思ってたんだよね。
 そしたらこないだ、TV番組「カセットテープミュージック」でマキタスポーツさんがこの曲をヘンだと指摘していて、共演の音楽評論家のスージー鈴木さんも頷いていたので、「やっぱり。俺だけが思ってたんじゃないんだ!」となったので、今回はちょっと書いちゃおうかな、と。

 先ずそもそも、can you celebrate?という言葉ですよね。これが早速よく分からない。
 マキタスポーツさんは番組内で「無理矢理訳すとすれば『言祝ぎ(ことほぎ)を表す』みたいな。」なんて言ってたけど、まあそれは多分に笑いに走った表現だと思うんだけど、celebrateって「祝う」「祝福する」って意味だよね。
 この曲って結婚をテーマにした歌だろう事は聴けば直ぐに想像ができると思うんだけど、だとすると2つの疑問が湧きます。
 1つ目は、わざわざ確認してくるって事は、祝福してくれない可能性があるの?って事ですよね。
 で、もう一つは、祝福って結婚する当人じゃなく周りの家族や友人とかがしてくれるモンじゃない?って事。
 だからコレ、結婚する相手=彼氏に言ってるんじゃないのかなと思いきや、次の歌詞はcan you kiss me tonight?だし、曲の終わりの歌詞はI can celebrateなんだから、やっぱり当人同士の話なんですよね。
 よく分からない。

 因みにネイティブの人がこのcan you celebrate?という言葉を聞いたら普通は「一緒にお祭り騒ぎしようぜ!」という意味に解釈するそうです。しっとりした曲調と全然違うw

 更にはその次の歌詞。
 we will love long long timeと続く訳ですが、コレ、未来形ですよね。つまり今は愛してない事になるw
 ここは現在完了形(継続)になるべきなのでhave+p.pを使わなきゃなんない筈ですよね、普通なら。違うのかな。俺もそんなに英語に堪能な訳じゃないので違うかもしんないw

 と、ここまでの内容を考えた上でトンデモ解釈をカマしてみると、この曲って実は「妊娠を彼氏に告白した歌」なんじゃないの?って思えてくる。
 祝福されるのはこの男女当人じゃなくて生まれてくる子供、若しくは子供が生まれてくるという事実自体なのではという。
 それを彼氏に突き付けて、「責任とって結婚してくれるの? 認知してくれるの?」と言ってる様に聞こえちゃうんだよなぁ。
 そう思うと最後のI can celebrateというフレーズは「私は産みますよ。」という意味にも取れるし、途中に出てくる「二人きりだね」という歌詞は彼氏と別れて自分と子供の二人きりという意味にも取れちゃう。
 we will loveというのも自分と、これから生まれてくる子供との愛の事で、彼氏との関係じゃないから現在完了形ではなく未来形っていうね。

 いや、まあ絶対こんな歌じゃないんだけどさw
 でも、そうなっちゃうくらい、この歌はヘンなんですよ。

 で、次の、初めて出てくる日本語の歌詞が「永遠という言葉なんて知らなかったよね」ですよ。
 普通の日本人なら「いや、知ってますけど…」としか応え様がないw
 これも「私達が永遠を誓い合う関係になるなんて、始めは思いもよらなかったよね」という意味なんだろうけどさ。
 取り様によっては「結婚なんて考える様な深い付き合いの相手ではなく、刹那的な恋だった」とも聞こえるし、そこに俺のトンデモ解釈の妊娠告白説を組み合わせると、「深い付き合いの相手じゃないけど、ゴムは着けてませんでした。」という事になる。
 いやだから、絶対そんな歌じゃないってw

vol.2 へ続く

2021年5月31日月曜日

トムとジェリーをもう一度 vol.2

vol.1の続き

  トムとジェリーの音楽はオーケストラで演奏されてますから、そのオーケストラの全てのパートの譜面を書き起こしてオーケストラメンバーに渡して、音楽含めた音声を全て一辺にレコーディングして、その音声に合わせて映像の方を後から作るという手順なんですよ。
 トムが痛い目に合う時のバンッという効果音やトムの「ギャー!」という叫び声、トムを叱りつける家政婦の声まで、おおよそ6分を全部まとめて録っちゃう。
 だから、実はこれを作っていた作曲家の方が凄いって事なんですよね。スコット・ブラッドリーという方なんですけど。
 ジャズでもクラシックでも何でも御座れのトムとジェリーの音楽を、完成図を想像して先回りで作り上げちゃうだけでもとんでもないんですが、更に鬼なのはこれを全盛期は2週間に一本のペースで作ってたっていうんですから、マジで恐ろしいですよね。

 こういう手順で作られていたので、トムとジェリーは音声と映像がピッタリと合致しているんですね。

 で、実はこの、音楽を先に作って後から映像を合わせるという事に一部挑戦している作品が日本にもあります。しかも超有名タイトル。
 それが「天空の城ラピュタ」。
 ドーラ一家の息子達とパズーを雇っている炭鉱のオヤジが殴り合いの喧嘩をするシーンが、この手法で作られています。
 でも、観た人なら分かると思うんですけど、この場面、凄くテンポが悪いんですよね。
 作曲は勿論久石譲さんが担当されてるんですが、それでもあのテンポの悪さ。
 スコット・ブラッドリーという人の凄さがお分かり頂けるかと思います。

 さて、この様な手法で作られたトムとジェリー。
 という事は、というのが二つ有りまして。

 先ず、譜面があるという事、それは即ちオーケストラで再現可能という事ですよね。
 実際結構有名なオーケストラが結構大きなコンサートでトムとジェリーを完全再現して拍手喝采を浴びています。
 YouTubeで検索すれば、ベルリンフィルの演奏とか出てきますよ。

 もう一つ、トムとジェリーは劇場で公開されていた短編フィルムなので、アカデミー賞を幾つも受賞していたりするんです。
 多分一番有名なのはピアノコンサートのヤツですよね。
 ピアニストのトムがピアノコンチェルトを演奏するんですけど、そのピアノの中で寝ていて叩き起こされたジェリーが怒ってトムの邪魔をしまくるヤツ。
 あれは本当に映像と音声のシンクロぶりも勿論、トムのピアニストとしての仕草や表情なんかも、マジで凄まじいクオリティだなと何度観ても感心してしまうし、尚且つ滅茶苦茶面白い永遠の名作ですよね。
 このトムとジェリーのアカデミー賞受賞作品だけをまとめたDVDというのも発売されていて、たったの千円位で買えちゃったりしますんで一家に一枚いかがでしょうか。(回し者)

 またトムとジェリーはAmazonのプライム会員ならprime videoで無料で観られた筈なので、是非チェックしてみてください。(回し者)

 てことで、まだ戦時中、日本人が竹槍を持って「米兵が来たらこうっ、米兵が来たらこうっ!」ってやってた最中にアメリカ人はこんな凄い物を作ってたんだっていう、そりゃ戦争負けるわっていうねw、今回はそういうお話でした。

 おしまい

2021年5月17日月曜日

トムとジェリーをもう一度 vol.1

  皆さん勿論トムとジェリーは大好きだと思います。(強制)
 ただ、「子供の頃は好きだった。大人になってからは観た事ない。」という方も多いんじゃないでしょうか。
 そんな方には、是非大人になった今、もう一度トムとジェリーを観ていただきたいと思うのですよ。
 子供の頃はただ「面白いアニメ」としか思ってなかった物が、大人の目で見ると「何じゃこの完成度の高さは!」と驚くと思います。

 何が凄いかって、音楽も含めた音声と、映像が完全にシンクロしているんですよね。
 トムがそ~っと歩けば音楽もそ~っと、ジェリーがちょこまかと走れば音楽もちょこまかと。こういう全てのタイミングや音楽の雰囲気なんかが、毎回毎回きっちりと完璧にフィットしてるんですよ。

 何でこんな物が作れたんでしょう。

 先ず、多くの日本人が思い違いをしてると思われる点なんですけど、トムとジェリーって基本、テレビアニメではないんですよ。
 「何言ってんだコイツ」と思う方もいるでしょう。テレビで放映されてたじゃないかと。
 トムとジェリーが作られ始めたのは1940年です。終戦が1945年だから、まだ戦時中ですよね。という事は、まだカラーテレビはこの世に存在してませんよね。
 では、トムとジェリーの白黒の映像って見た事ある人います?
 いないですよね。だって存在してないんだもん。

 トムとジェリーは実は、映画館で公開されていた短編フィルムなんですよ。
 いや、勿論後年になってテレビ版も作られてますけどね。

 映画って今はデジタル化されてますけど、「ニューシネマパラダイス」なんか観た事のある人なら知ってると思うんですが、昔はでっかい映写機をモーターでブン回して、繊細で燃えやすいペラペラのフィルムを回して上映してた訳で、それが長編映画となると、そこそこの重さのフィルムをセットして、それを2時間とか回しっぱなしにする事になるという事ですよね。
 そこで長編を上映する前に映写機の試運転、動作チェックをする為に短編フィルムを回したいという事なんですね。
 試運転なんて開館前に済ましとけよと思うかも知れませんが、この短編が魅力的なら、長編が始まる前にちゃんとお客さんが映画館に入ってくれて、尚且つ試運転も兼ねられると。
 今じゃ信じられませんが昔は映画館って途中で出入りできたんですよ。上映中の映画館に入って途中から観て、最後まで観ても映画館に居座ってその映画の次の上映の頭から観て、自分の見始めたところまできたら出てっちゃう。こういう事が普通にされていたんですね。
 ついでに言うと、席が埋まってたら立ち見も普通にされてました。
 勿論映画館側としては途中の出入りはなるべくしてほしくない訳ですから、試運転と兼ねて短編フィルムを流そうと。

 で、この短編フィルムのトムとジェリーがどの様に作られていたかというと、先ず映像作家がこういう映画を作ろうというプランを描いた絵コンテという物を描くんです。
 4コマ漫画の様に場面を切り取った絵に、動き等の説明文を書き着けた物ですね。
 で、これを実際に映像を作るより先に作曲家に渡すんです。
 作曲家はこれを元に、全ての展開やタイミングを想像して、尚且つ程よい長さ(トムとジェリーなら6分程度)になる様に音楽を作るという訳なんですな。

 

vol.2 へ続く

2021年5月3日月曜日

目眩くホットサンドの世界 vol.2

 vol.1の続き

 先ず、やっぱり野菜は入れたい。
 レタスをペラのまま挟んでも良いんだけど、やってみたら噛った時に噛みきれずにズルッとレタスがペラのまま出てきちゃって食べ辛かったのて、一工夫する事にしました。
 キャベツを千切りにして(面倒くさかったらコンビニでカット野菜を買ってくるのもアリ)ちょっと塩を振って揉み込んで1~2分置いたら、粒マスタードとマヨネーズを等量入れて混ぜ合わせます。粒マスタードはスーパーにいけばチューブのヤツが売ってますよ。ワサビとかある場所に。
 もうコレだけです。ぶっちゃけコレとハムをパンに挟んで食べるだけで美味しいw
 なのでコレを準備したらもう、あとは食べたいもの何挟んでもOK。

 定番はハムですけど、フライパンで炒めほぐしたコンビーフも良いですよね。ちょっと胡椒を振って。勿論チーズは必須です。

 俺がよくやるのは、セブンイレブンに売ってる大豆肉のタコスミートに、細かい角切りにしたトマトを混ぜたヤツを挟んでます。美味しくてカロリーオフ。
 カロリーオフで言うと、やっぱりセブンイレブンに糖質ゼロのほぐしサラダチキンというのが売ってますんで、コレ入れても美味しいです。コレにも黒胡椒を振るんですけど、二枚目いく場合は味変で胡椒の代わりにガラムマサラ振るとカレー味になりますよ。

 カロリーなんて気にしないなら、コンビニにパウチに入って売ってるハンバーグとか豚の角煮を挟んじゃう。
 厚みがあるので予め温めておくと良いです。

 コンビニに売ってる物で言うと、ポテサラとかごぼうサラダも、簡単で美味しいです。
 あと和惣菜もアリですよね。ひじき煮とかきんぴら、野沢菜漬けとか、そのままだとしょっぱいものは一緒にクリームチーズ挟んじゃうとか。

 おやつにするならクリームチーズとお好きなジャムとか、ピーナッツクリームとスライスしたバナナとか、チョコとホイップクリームとか、めっちゃ簡単ですよね。材料買ってくるだけ。
 チョコは糖質ゼロのヤツとか糖として吸収されないオリゴ糖が使われてるヤツとか今色々売ってますし、ジャムも糖質50%オフのとかありますよね。案外ヘルシーなデザートができるから、罪悪感軽め?

 こんな感じで、ホットサンドプレートがあるとめっちゃ楽しいです。絶対買った方が良いです。ホントにお薦め。

 え、いい加減たまには音楽の話もしろって?

 じゃあ最近リリースされた中からmint julepが3/19にリリースしたてホヤホヤのアルバム、「in a deep and dreamless sleep」をお薦め。タイトル通り、めっちゃ良く眠れますw


 おしまい

2021年4月19日月曜日

目眩くホットサンドの世界 vol.1

  先ず最初にさらっと、シンヱヴァンゲリヲン観てきたので感想を。

 俺は公開されてから一月後位に観に行ったんで、1ヶ月位はネタバレから逃げ回る人生だったんだけどw、なんとなく伝わってくる雰囲気はかなりポジティブというか、随分絶賛されてるなぁと感じていて。

 で、実際観てみて、確かに概ね素晴らしい、この、ある意味気持ち悪い話wにハッピーエンドらしきものをくっ付けたなぁと思いました。
 謎な部分は残ってるけど、それがエヴァだものね。それで良いんでしょう。

 ただ、解らないというのとは別に、腑に落ちない部分も俺的には無い訳じゃなかったなぁ。
 「槍」というものが、ガンダムにおけるミノフスキー粒子みたいな?

 劇場版ナウシカというよりは漫画版ナウシカだし、と言うかそれを言うならナウシカというよりは千と千尋の神隠しですわな。

 と、何か貶しているみたいになっちゃったけど、凄く面白かったです。
 個人的にブッ刺さったのは、クライマックスに流れた「ヴォイジャー」って曲ね。
 ユーミンの曲なんですけど実はコレ、俺が生まれて初めて自分の小遣いを叩いて買ったシングルレコードなんですよ。だから流れた時「マジかよ」ってなりましたね。
 「さよならジュピター」という映画のテーマソングなんですけど、この映画がどんなモンか知ってる人は色々思うところがあったと思います。

 それも含めて全体的に「目指してるのはハリウッドじゃないぞ」という、日本の特撮やSF、映画やアニメに対する愛に溢れているというのが感じられましたね。
 ハリウッド版エヴァが制作されたら、絶対この内容にはならない。今色々あるからねハリウッド。ポリコレとかさ。

 と、語りだしたらキリがないのでエヴァの感想はここまで。

 で、今回はなんとお料理の話w
 去年の12月に、自分へのクリスマスプレゼントとしてホットサンドプレートを買ったんですけど、あまりに簡単に美味しいものが作れて最高なので、皆さんにもお薦めしたくなっちゃったのです。
 たかが5000円位で買えちゃいますからね。

 兎に角簡単なんですよ。挟む物を事前に決めておけば。

 俺が一番よく食べるのは、パンにトマトピューレ塗って、ピザ用チーズかけて、もう一枚のパンで挟んで焼くだけ。なんちゃってピザトーストですね。
 弱火で片面3分ずつ焼くだけなので(二枚目を焼く場合は2分40秒。プレートが熱くなってますからね。)、準備時間含めても10分もあればすぐに美味しいのが食べれちゃいます。(焼き時間はお使いのコンロにもよりますので、あくまでも参考で。)

 一つポイントなのは、焼く前にプレートに油を塗る事。
 プレートを買った時に付いてた説明書に「油を薄く塗って」とちゃんと書いてありました。
 プレートを買った後にYouTubeで色々ホットサンドのレシピを探ってみたんですけど、意外とこの「油を塗る」をやってない人が多かったです。
 で、その、塗る油なんですけど、近所のスーパーにココナッツオイルがあったら是非買ってみてください。
 これがあると、そこらのスーパーやコンビニで買ったテキトーなパンを使っても、甘い香りがふんわりと漂って美味しさがワンランクアップしますよ。
 勿論無ければオリーブオイルや普通のサラダ油でも良いし、カロリーを気にしないならバターを塗れば間違いないです。

 で、休みの日とかで時間がある時には、もう少し凝ったものも作ります。
 と言っても全然簡単。小学生でも作れます。

 

vol.2へ続く

2021年4月5日月曜日

おすすめインディゲーム vol.2

 vol.1の続き

 次におすすめするのは「Rime」というゲーム。
 これはゼルダの伝説みたいなアクションパズルゲームです。戦闘のないゼルダっていう感じ。

 このゲームのおすすめポイントはシナリオというか世界観です。
 それこそゼルダの様なファンタジーの世界観なのかと思いきや、「え、そういう話だったの?」という感じで、最後はウルウルしちゃいました。

 ただ、残念なのはこのゲーム、ちょっとお値段が高めなんですよね。
 サクッとエンディングを見るだけなら、パズルの得意な人なら4時間とかで終わっちゃうと思うんですが、それでお値段2000円以上するんで。
 これはだから、YouTubeでプレイ映像を観た方がゴニョゴニョゴニョ・・・

 まあ、ジーンとくるお話を見たい方におすすめです。

 最後にもう一本、「BROTHERS」というタイトルをおすすめします。

 このゲームはなんと言っても、「二人のキャラクターを一人で操作する」という大きな特徴があります。
 今のゲームのコントローラーって、スティックが左右に付いていて、かつ両手の人差し指に当たる所にトリガーの様なボタンが付いてますよね。
 これを利用して兄と弟、二人のキャラクターを操ります。
 弟の方が小さいので狭い所に入っていけるんですけど、ただこの弟、幼少期のトラウマで泳ぐ事ができないので、深い水場を越えなきゃならない場面では兄にしがみついて連れていってもらう必要があります。

 このゲームもまた世界観に意外性があって、始めは中世から近代になりかけぐらいの、何処かヨーロッパの小島の様な感じに見えるんですけど、途中から「え、そんな感じなの?」みたいになり、最終的には「イヤイヤ、この世界、何が起こってるんだよ!」という風になっていきます。
 ちょっとその過程で、怖いというか気分の悪くなる様な表現もされるんで、小さなお子さんにはちょっとキビシイですね。大人向けです。

 このゲームのおすすめポイントはなんと言ってもエンディングの演出です。
 勿論ネタバレになるので詳しい事は書きませんが、正に「ゲームでしかできない表現」に、俺は鳥肌が立ちました。
 「これがやりたかったのか。」「これを思いついちゃったら、そりゃゲーム作るしかないよなぁ。」という。
 他のゲームはYouTubeなんかで観るだけでも良いと思いますが、この「BROTHERS」だけは是非ご自身でコントローラーを握ってプレイしていただきたい。最後まで辿り着けば俺の言ってる意味がわかると思います。

 今回は以上です。
 ホントはまだまだ、幾らでもおすすめタイトルがあるんですけどね。
 それはまたの機会に。


 おしまい

2021年3月22日月曜日

おすすめインディゲーム vol.1

  我々のやっている音楽もそうですが、今やゲームも大手メーカーから発売しなくても世に出す方法が用意されている時代。
 PCや家庭用ゲーム機、スマホでインディゲームが手軽に遊べて、メジャーなゲームと分け隔てない存在になってますよね。

 インディからスタートして、誰もが知る有名タイトルにまでなったものの代表がマインクラフトですよね。
 ただ、あのゲームは最早やれる事が多くなりすぎて逆に何やって良いのかわからないレベルになってしまっていて(だからこそ無限に遊べる訳ですけども。)、なんかかえってハードルが高くなってしまっている気さえします。
 ぶっちゃけ、ニコニコ動画やYouTubeで他者が遊んでるのを観るだけでお腹一杯な感まであります。

 最近のヒット作というと、なんと言ってもフォールガイズでしょう。
 これまでシューティングゲームによくあったバトルロイヤル形式をマリオの様なアクションゲームに落とし込んで、勝てなくてもポイントが貯まっていってコスチュームの着せ替えが多数用意されていて、というヤツです。
 これは老若男女誰でも遊べる敷居の低さもあって、たまにサーバーが重くなっちゃうくらいの大ヒット。

 それから、天穂のサクナヒメも話題になりましたね。
 これはアクションゲームのパートと稲作をするパートで構成されているゲームなんですが、稲作パートがかなり本格的で、農林水産省のホームページが攻略サイト代わりになるとまでいわれた作品です。
 このゲームは開発者の人数が極端に少ない事でも話題となりました。

 この様に、ゲーマーの間では当たり前な存在となったインディゲーム。
 その中から個人的なおすすめを今回はいくつかご紹介します。

 先ずは「風ノ旅ビト」というタイトルを紹介させてください。
 もう9年ぐらい前に発売されたタイトルで、ゲームファンの間では「何を今更」という様な定番ソフトです。
 個人的にこのタイトルがインディゲームの可能性というのを一気に世に知らしめたというイメージがあるんですよね。

 メジャータイトルの様に細部まで描き込まれた映像というのでは勿論なく、非常にシンプルな映像ながら、デザインや色合い、光と影の表現によって誰もが「美しい」と感じる世界観。
 そしてその世界を飛ぶ様に移動する爽快感。
 サクッとエンディングを見ようと思えば2時間くらいで終わってしまうゲームですが、いつまでもこの世界に留まりたいと思ってしまいます。

 また、このゲーム、始めた時はたった一人この世界に放り出された様な気がするんですが、オンライン協力プレイの要素があるんですよね。
 このゲームには言語が一切出てこないので、何処の誰だかわからない人と簡単な合図だけでコミュニケーションを取りながら一緒に旅するのはなんとも不思議な体験で、これはゲームというメディアでないとなかなか体験できない事ですよね。

 また、このゲームはメインのディレクターが中国出身の方だというのも話題となりました。
 言われてみれば確かに中国っぽいところも感じられるんですが、言われなきゃ気付かないレベル。

 このゲームはプレステとPCの他、iOS版もあるのでiPhoneをお持ちの方はスマホでも遊べます。
 賞も沢山獲得してる安心のタイトルなので、まだ遊んでない方は是非。

 vol.2へ続く 

#風ノ旅ビト

#天穂のサクナヒメ

2021年3月8日月曜日

補足~

  あんなに長々と書いたガンダムの話なんですが、スンマセン続きます。

 と言うのもね、コレ、以前クローンウォーズの話を書いた時にもあったんですけど、俺がブログでネタに取り上げた後に新しい情報が解禁されちゃったパターンを、また食らってしまいまして。

 ハイ、てことで、閃光のハサウェイの劇場版は三部作であると正式に発表されましたね。

 まあ、ファンにとっては願ったり叶ったりなんですけどね。
 と言うのも、閃光のハサウェイの原作の小説って全部で3冊なんですよ。それを一本の映画にギュッとしちゃうのかなと思ってたんで、それが小説一冊につき映画一本という余裕のある構成で見せてもらえる訳ですから、そりゃそっちの方が良いに決まってますよね。
 後で話しますけど、ガノタ(ガンダムオタクを略してガノタっていいます。)はギュッとするのはちょっとなぁと思っていたりします。

 まあ、ですから、まだガンダムに触れてない方は俺の主張通りファーストガンダムのⅠ、Ⅱ、Ⅲ、ΖガンダムのⅠ、Ⅱ、Ⅲ、逆襲のシャアの7本の映画を観て、最速で追い付いておいてからハサウェイの1本目を観ていただいて、そこからハサウェイの2本目までに色々ゆっくりと間を埋める事が出来ますよね。

 俺が後回しで大丈夫と言ったΖΖを観てみるも良し、未来へ飛んでF91やターンAガンダムをみるも良し、過去に戻ってジ・オリジンを観てみるも良し。

 ジ・オリジンは漫画の方を読むのも良いですよね。
 漫画ではファーストの話全般を再構成しつつ、ファーストの前日譚も描いているのでより理解が深まりますし、何より安彦良和さんの絵がもう素晴らしいですからね。
 アニメの世界で「ゴッドハンド」と呼ばれた安彦さんが、ペンを使わず面相筆で描く最早名人芸と呼んで差し支えない絵は、是非手に取ってみていただきたい。

 ただ、俺が一番お勧めするのは、前言をひっくり返す様なんですが、ファーストとΖのテレビ版を観てみる事なんです。

 やっぱりテレビ版を映画3本に凝縮してるんで、当然端折られてる部分とか、あと、テレビ版の時には不満が残った所を変更してあったりするんですけど、それが結構ファンにとっては元の方が好まれてたり。

 特にΖなんですよね。
 実は映画版三部作のΖは結構色々無茶してるんで観てて「ん?」となる所がモロモロあって、アレだけ観てもなかなか理解が及ばないと思うんです。

 だから、最速で追い付く為にコレで済ましてしまえという意味でお勧めしたんですけど、やっぱりテレビ版を観ていただいた方が絶対良いと思うんです。

 ファーストの方はテレビでの放送が終わって数年以内に作られてて、それこそテレビ版は視聴率が悪くて打ち切りを食らって、でもそこから評価、人気を勝ち取って映画化まで漕ぎ着けて、もうスポンサーの顔色を伺って作らなくても良い、ホントはこうしたかったんだっていう所が見てとれて、だからそういった所を見比べる楽しさなんてものがあったりもするんですね。

 例えば、以前ガンダムの話をこのブログでした時に、ガンダムの超合金が売れないせいでスポンサーから横槍が入って、後出しでガンダムと合体するGパーツというメカが出てきたという話をしたと思うんですけど、ソレ、映画には出てこない。

 それとか、ファーストにはガンダムを支援する為にガンキャノン、ガンタンクというモビルスーツが出てくると言いましたけど、このガンタンクっていうのが足が無くて下半身がキャタピラで、文字通り戦車みたいなヤツなんですよ。
 おかしいですよね、ガンダムの世界観って人型のロボットを戦争に使う方が有利という話だった筈なんだもの。
 テレビ版ではこのガンタンクが地面の無い無重力の宇宙空間でも出撃してて、これは子供心にも「ヘンだな」と誰しも思ってたと思うんですが、映画版では2機目のガンキャノンが支給されて、後半ガンタンクは出てきません。

 更に言うと、作画の責任者であった安彦良和さんが体調を崩してテレビ版の後半に関われなかったので、映画版では重要なシーンはバッチリ安彦さんの作画に直されてたりします。

 と、ファーストの方はこんな感じでテレビと映画の違いを楽しめるんですけど、問題はΖ。

 そもそも、Ζって話が複雑なんですよ。
 ファーストが地球連邦に不満を持つジオンの独立戦争の話でありながら、その奥にはジオニズムという思想、アースノイドよりもスペースノイドの方がこれからの人類を牽引する存在だという主張があったというのが、ガンダムというお話の重要な部分だと前回言いましたが、結局ジオンは敗れる訳ですよね。

 それを受けてΖでは、「そら見ろ地球人の方が優秀じゃないか」と言わんばかりに、地球連邦軍の中でも地球生まれの者を集めたエリート集団「ティターンズ」という組織が作られてて、そのティターンズが連邦軍の中で余りにも強い力を持ち過ぎてしまっている状態になっているんです。
 で、そこに対抗する反ティターンズ組織というのも幾つか生まれていて、Ζの主人公のカミーユは反ティターンズ組織であるエゥーゴに所属してるんですよ。
 だから、敵=悪者が地球連邦軍になってしまっているという、ファーストとは逆の状態になってしまっているんですけど、そのティターンズ、反ティターンズの両方に兵器を供給するアナハイムエレクトロニクスという企業があったり、そこにジオンの残党がジオンの再建を目指して勢力を拡大してきて、ファーストでは悪者だったジオンと主人公が所属するエゥーゴがティターンズを倒す為に共闘したり、更にそこに、ティターンズ所属でありながら地球にいるティターンズの幹部たちとは別の思惑を持った「木星帰りの男」シロッコなんてのが出てきたりで、三つ巴、四つ巴の構造になり、単なるドンパチだけじゃなく政治や思想、主義主張といった部分も絡んできて、通して観てても結構ややこしい。

 しかも打ち切りを食らってない分ファーストよりも長い話なのを映画3本にギュッてしちゃったら、そりゃ難解になっちゃいますよね。

 しかもね、コレちょっとネタバレになっちゃうんですけど、Ζってテレビ版と映画版で結末が違うんですよ。
 テレビではΖが終わった後、ΖΖという「続き」があったけど、映画はΖΖは作られてなくて。

 ガンダムのお話の部分を考えているのは富野由悠季さんという方だと、前回書きましたよね。
 で、富野さんはΖΖには関わってないとも書きました。

 永野護さんという方がいまして、この人は大学卒業後にガンダム等を制作しているサンライズという会社にデザイナーとして入社して、Ζガンダムにも関わった人物で、その後、ご自身のライフワークである「ファイブスター物語」の制作に全てを注ぐ為にサンライズを退社しているという人でして、この人について語りだしたら、またブログ1本分になっちゃうんで今回は止めときますが、この人が「オヤジ」と慕う富野さんと、Ζの放送も、逆襲のシャアの公開もとっくに終わって何年も経った後に対談をやったんですね。

 この対談で富野さんが「Ζは実はやりたくなかった」と告白しているんです。

 ファーストガンダムという作品は作り手側がかなり意欲的に作った物だけど、意欲作であるが故に受け入れられるのに時間がかかった物でした。

 それに対してΖというのはガンダム人気が絶頂に達して、映画も大成功、ガンプラは売れまくり、ファミコンでガンダムのゲームを出しても売れまくりという状態で、いよいよガンダムの続編を作ろうと、企画先行で始まった物で、それに富野さんは実は乗り気じゃなかったと言うんです。
 で、その「イヤな気分」が、Ζという作品には出てしまっていると富野さんは反省の念を吐露したんですね、その対談で。

 そしたら永野護さんが、「富野さんはΖを作り直さなきゃいけない」と言い出したんですよ。

 そうしたらホントに、その数年後にΖの劇場版が作られるとアナウンスされたんですよね。
 だから、富野さんにとっての「イヤな部分が出ちゃってる所」が削られる形で映画化されて、それが結末にまで及んだんでしょうね、多分。知らんけど。
 だもんだから、ファンからしたら重要と思ってたシーンが「あれ、そこカットしちゃうの?」みたいのもあるの。

 あとね、Ζの劇場版ってこんな経緯で、テレビ版から相当時間が経って作られたんで、ベースはテレビ放送局当時の映像を使いながら、新たに作り直した映像とミックスしてあるんですけど、当時とアニメの作り方、技術、技法が随分変わってしまっているモンだから、新たに作り直した部分が当時の映像にフィットしてなくて違和感バリバリなんですよw
 今やメカは全部CGですもんね。

 てことで、とりあえず追い付く為に劇場版のΖを観た人も、勧めといてナンなんですが是非テレビ版も観ていただきたいのです。
 何、ハサウェイの2本目まではきっと一年位開く筈ですから余裕ですよ。

 テレビ版のΖを観終える頃には、恐らくガンプラという沼に足を突っ込む事になりかねないですけどねw


 おしまい

2021年2月22日月曜日

更にガンダムの話 vol.3

 vol.2 の続き

  俺が今まで挙げた以外の作品は、スピンオフだったり、若しくはファーストガンダムからの流れとは全然関係ないお話だったりするんですよ、実は。

 具体的に言うと先ず、「ジ・オリジン」というのがあります。
 これはファーストガンダムのキャラクターデザイナー兼、作画のトップを務めていた安彦良和さんという方がいまして、この方は現在は主に漫画家として活躍されているんですけど、この安彦さんがファーストガンダムをコミカライズして、ついでに俺が今回書いたバックグラウンド、ファーストガンダムの設定部分でしかなかったところを独自に再解釈、大幅に肉付けして描いたものです。
 で、この中からテレビ、映画のファーストガンダムでは描かれなかった「ファーストガンダム以前の部分」のみ、アニメ化されています。
 一時間ぐらいのサイズの作品が十編ぐらいあった筈なので、まあこれも余裕があればという感じですね。
 あくまでも安彦さんなりの解釈で、富野さんはノータッチの作品です。

 それから「08小隊」、「ポケットの中の戦争」というOVAがあります。
 OVAというのは所謂Vシネマのアニメ版みたいなものです。テレビでも映画でもないビデオ作品。
 この二つは一年戦争中に起こった出来事ですな。スピンオフ。ノー富野。

 それから、0083という作品。
 これは一年戦争とZの間のお話。
 面白いけど突っ込みどころも多めかな。ノー富野。

 更にはガンダムU.Cというのもありまして、これは小説家の福井晴敏さんという方(「亡国のイージス」という小説が有名ですね。)が書いた、「閃光のハサウェイ」と「F91」の間のお話ですね。
 これをガンダムの所謂正史と考えるかどうかは人によりけりというところですな。
 フルフロンタルというキャラクターがこのお話には登場するんですが、このキャラクターを受け入れられるかどうか。
 受け入れられない人にとっては「ガンダム好きな小説家の書いたヤツ」という扱いでしょうな。
 まあ、アニメ化もされてるんですが、前述した通り「閃光のハサウェイ」より後のお話ですから、後回しでOK。勿論ノー富野。

 それ以外のガンダムと名の付くもの、「SEED」とか「Vガンダム」、「Gガンダム」、「00」、「鉄血のオルフェンズ」なんてのは、ファーストガンダムからの流れとは関係のない、別の世界の別のお話です。
 それぞれ面白いのでしょうが(ワタクシ全然観た事ありませんw)、勿論「閃光のハサウェイ」を観る前に観ておかなくてはならない作品ではないですよね。

 という訳で、なんかとんでもない沼の入り口を曝しただけの様な気もしてまいりましたがw、ガンダムの最新劇場作品を楽しむ為の最速の道を示してみたつもりなので、興味が沸いたという方が一人でもいらっしゃれば幸いでございます。

 「閃光のハサウェイ」は原作小説通りならばとんでもないハイスピードバトルが展開される筈です。
 それを可能にする最新のアニメーション技術を映画館の大スクリーン、大音響で楽しもうではありませんか。
 そしてそれとともに「飛行機的な物で戦うよりも人型のロボットで戦う方が有利という名目で始まったガンダムというお話なのに、モビルスーツで戦うのが当たり前になった結果、一周廻ってモビルスーツが飛行機みたいになっとるがな!」という突っ込みを入れようではないか皆の衆!


 おしまい

2021年2月8日月曜日

更にガンダムの話 vol.2

 vol.1 の続き

 ところで、兵器って普通量産されますよね。
 同じ型の物を沢山作って軍に配備、運用されますよね。
 ガンダムって、その量産型のモビルスーツを作る為の試作機、テストモデルなんですよ。
 だから予算とか、量産の為の生産ラインへの負担なんてのを度外視して、その時の持てる知識や技術を総動員してして作られたスーパーロボットなんですな。
 これを色々テストしてみて、「ここはもっと簡略化できる」とか、「この装備を量産するのはコスト的に厳しい」とかというのを詰めてから、それをベースに、実戦に投入する為の量産型モビルスーツを漸く作るという。

 このガンダムと、それを支援する為のガンキャノン、ガンタンクという3種類のモビルスーツを、連邦軍はサイド7という民間人が普通に暮らしているスペースコロニーの中で秘密裏に開発してたんです。
 だから、この時点で連邦軍はまだ3機しかモビルスーツを持っていないんですよね。まだ量産体制には入っていないの。
 因みに、このサイド7での連邦軍の開発主任がテム・レイという人物。ガンダムの主人公のアムロ・レイのお父さんです。

 で、この極秘の筈の連邦のモビルスーツ開発を何故か何処からか嗅ぎ付けて調査にやって来たのがジオン軍の新進気鋭のパイロットであり一個中隊を率いる少佐、シャア・アズナブルですよ。
 ガンダムファンでなくとも名前を知っている赤い彗星のシャア少佐。

 このシャアの部下が乗るジオンのモビルスーツ「ザク」が、サイド7に侵入するシーンから、ガンダムの第1話は始まります。

 気付きました?

 俺が今まで長々と書き連ねてきたお話、これ全部ガンダムというストーリーの「始まる前」の部分なんです。ガンダム本編では殆ど描かれない。バックグラウンド。

 ガンダムの主要キャラクター達はアムロ含めてサイド7で普通に暮らしていた十代の少年少女で、突然戦争に巻き込まれて運命に翻弄される事になる訳ですが、視聴者も又、初見ではこのバックグラウンドの部分は知らずに観る事になる訳で、「知らない世界」に巻き込まれながら本編中で断片的に明かされる情報から、このバックグラウンドを類推していくというのも、ガンダムという作品の楽しみの一つ。

 つまり、俺がやった事は、「ネタバレ」ですw

 何してくれてんだテメェ!
 このお喋りクソ野郎!

 そんな罵詈雑言が聞こえてきそうですが大丈夫。
 このバックグラウンドを知った上で観ても、ガンダムの魅力の奪われる部分はほんの僅か。知ってても知らなくても、その素晴らしさは全然損なわれるものではないのです。

 ほらほら、観てみたくなってきたでしょ。

 とは言っても、冒頭に話した「閃光のハサウェイ」まで追いつくまでは遥か遠いんじゃないのかという疑問は解消されてませんよね。

 大丈夫。テレビで公開されたアニメを何百話も観なくても追いつけます。
 最速で行くなら、劇場公開された映画を7本観るだけでOK。これなら毎週のお休みに1本ずつ観るだけでも、「閃光のハサウェイ」公開まで充分間に合います。

 具体的に言うと「機動戦士ガンダム」のⅠ、Ⅱ、Ⅲ。
 「機動戦士Zガンダム」のⅠ、Ⅱ、Ⅲ。
 そして「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の7本。
 これだけで最低限の流れは掴める筈です。
 これ全部Netflixで観れます。Amazon prime videoでも観れた筈。

 ガンダムというお話は、最初の「機動戦士ガンダム」、所謂ファーストガンダムが宇宙世紀0079から0080までの、後に「一年戦争」と呼ばれるところが先ず描かれて、そこから数年後の話が「Z」、その直後が「ZZ」、そこから更に数年後が「逆襲のシャア」、そこからずっと時間が飛んで「F91」、そこから更にずうーーーーっと飛んで「ターンAガンダム」という流れになってます。

 で、今年公開される「閃光のハサウェイ」というのは「逆襲のシャア」の数年後の話なんですよ。
 ハサウェイというのは人名で、ファーストガンダムから登場してるキャラクター、ブライト・ノアとミライ・ヤシマとの間にできた子供でして、この子は「逆襲のシャア」に既に登場していて、その若さ故にとんでもない過ちを犯してしまっています。
 このハサウェイの「逆襲のシャア」以降の物語というのが「閃光のハサウェイ」で、原作の小説はかなり前に出版されていたんですが、ガンダム40周年という事で漸く映像化という訳なんです。

 だから、とりあえず「逆襲のシャア」まで観ておけば追いつけるんですね。

 あれ? ZZは? と思うかもしれませんが、コレ、後回しで構いません。勿論ストーリーは飛んでしまいますが、「何か色々あったんだな」ぐらいの押さえ方で良いと思います。
 ガンダムって、お話の部分は基本的に富野由悠季という方が考えておられるんですが、ZZは実は富野さんは関わってないんですよね。
 だから、なんかテイストが違うっていうのが先ずあって。
 で、ZZは映画化されてません。だから、ストーリーを知る為にはテレビで公開されたものを全部観なきゃなんないんですよね。
 更に言うと、それを全部観ても、またそこから「逆襲のシャア」までに時間が飛んでいて、そこを埋める作品は今のところ無いんです。だから、そこは結局想像で埋めるしかない。
 勿論Zからお話は直接続いていて、登場人物もそのまま継続して出てくるので、余裕がある人は観た方が良いのは当然なんですが、まあ後回しでもイケるんじゃないかと。

 いや待って、ガンダムってもっといっぱいあるでしょ。
 そう思った方もいると思います。

 vol.3 へ続く

2021年1月25日月曜日

更にガンダムの話 vol.1

  今回はガンダムの話をしたいと思います。
 今年はガンダム40周年なんですよね。
 横浜に新たに実物大のガンダムが建造されたのをニュースやネットでご覧になった方もいるのではないでしょうか。
 あれも40周年を記念した企画なんですが、もう一つ、映画「閃光のハサウェイ」の公開も予定されてます。(まあ、エヴァみたいに延期になるかもしれませんが。)
 なので、これまでガンダムに興味があった方には是非これを機会にご覧になってほしいのですが、そうは言っても「ガンダムと名の付くものは大量にあるんだから、今から観始めたって新作映画迄に間に合わないだろう。」と諦めている方もいるかもしれません。
 しかし、そんな事はないですよ、今からでも充分追い付けますよという事を、今回は説明していきたいと思うのです。

 前にここのブログでガンダムの話をした時は、ガンダム自体のストーリーではなく、大ヒットアニメの代表と思われているガンダムが実は視聴率が低くて打ち切りを食らっていたという話、そしてそこから何故大ヒットになったかという話をしましたよね。
 あの後、しくじり先生という番組で芸人のカズレーザーが同じ様な話を披露していたのを観た方もいたんじゃないでしょうか。

 今回はストーリーの部分、ガンダムってそもそもどんな話なのかを、ほんのさわりだけ話します。

 未来の世界、人口が増え過ぎ、地球という星が環境的にも資源的にも厳しくなってしまい、人は宇宙を目指し始めます。因みにガンダムの世界では、宇宙と書いて「そら」と読みます。

 コップに水が入っている状態を想像してみてください。
 そのコップを上から手で掴んで、手首を捻ってグリッと回す。それを繰り返すと遠心力で中の水は回転しながらコップの内壁に押し付けられますよね。
 この遠心力を利用します。
 宇宙空間に滅茶苦茶巨大な筒を作って、それをグルングルン回転させる。
 その筒の内壁に人が暮らせる街を作れば、無重力の宇宙空間でも遠心力を重力代わりにして生活できるという訳です。
 この巨大な筒をスペースコロニーと言います。ガンダム以外にも映画「エリジウム」や「インターステラ-」なんかで見た事がある人もいるんじゃないでしょうか。
 ガンダムの世界ではこのスペースコロニーが幾つも作られ、フロンティアスピリットを持った人々がそこで暮らす為に宇宙に飛びたちます。
 と言うと聞こえは良いですが、別に地球に居続けても大丈夫な人達はそんな事をする必要はない訳で、宇宙を目指す人達というのは地球に居られない人、居たくない人であったりもするんですよね。

 と言う訳で、スペースコロニーを利用して暮らし出す人々が出てきて、勿論食べ物飲み物、農産物や畜産物もスペースコロニー内で作っていくんですね。
 地球と違って環境はコントロールされてる状態で生産できる訳ですから、ボロボロになってしまった地球で作るよりも安定して生産できて、逆に宇宙で生産したものを地球に輸出、供給できる様になっていく。
 更には鉱物資源なんかも、月面や小惑星から採掘して地球にはないものを利用し始めたり、やはり資源の枯渇した地球に供給したりされていって。

 その様にして酷い環境になってしまった地球に住み続ける人達の事を、宇宙で暮らす人達が支えるといった局面も出てくる訳です。

 しかし、にもかかわらず人類の政治体制の重心は地球にあるまま、というのがガンダムの世界なんです。
 地球連邦という、今の現実の世界で言うところの国連みたいなものがあって、宇宙にも多数暮らしている人類の全体の方針をこの地球連邦が決め、統治しているんですね。

 その様な状態が続いたら、当然宇宙に暮らす人達の間に不満が募っていきますよね。
「食糧だって資源だって宇宙に頼ってる地球の連中が、なんで偉そうに俺達の事を仕切ってるんだ」って。
 でも、そんな不満を行動に移して揉め事でも起こしたら、それを制圧しにくるのも地球連邦軍、または地球連邦の指揮下にあるスペースコロニーの自治政権の持つ警察組織なんですよね。

 宇宙移民が始まって何十年か経ち、移民二世、三世も生まれ、地球を見たこともない子供達が現れ始めた世界、宇宙に暮らす人々の間の一部に地球に対する不満が燻る中、サイド3というコロニーで一つの新しい思想が産まれます。

「地球に暮らす人類=アースノイドは、もう何万年も進化らしい進化をしていないじゃないか。これからは我々宇宙に暮らす人類=スペースノイドこそが世界を牽引し未来へ導く存在だ!」

 この、スペースノイドとアースノイドの対立構造というのが、ガンダムというお話を読み解く上でかなり重要な要素なので、ここをしっかり押さえておきましょう。

 この思想を唱えたのがジオン・ズム・ダイクンという人で、この思想はジオニズムと呼ばれ地球連邦に不満を持つ人々によって強烈に支持され、ジオン・ダイクンはサイド3の自治政権のトップに祭り上げられます。

 しかしこのジオン・ダイクンは志半ばで亡くなってしまい、その後継者に指名されたとしてデギン・ソド・ザビという人物がサイド3の自治政権のトップに就き、その一族、ザビ家がサイド3の実権を握る事となります。
 しかしこれはサイド3の自治権という権力を巡った暗殺なんですな。その証拠にダイクンの二人の遺児、キャスバルとアルテイシアは亡命し、サイド3からは居なくなっているんです。
 にも関わらず、サイド3に暮らす人々の大半はザビ家の言い分を信じ、ザビ家を自らの指導者として熱烈に支持するのです。そのくらい地球連邦に対する不満が大きく膨らんでいたんですね。
 ザビ家は耳障りの良い思想を目眩ましに、血塗られた権力を欲しいままにする様な者たちな訳です。

 そしてザビ家が牛耳るサイド3政権はダイクンの名を採ってジオン公国を名乗り、デギン・ザビを公王に据え、なんと地球連邦に対して独立戦争を挑んでくるのです。

 普通に考えてそんな一スペースコロニーが地球連邦に戦争を挑んだって勝ち目は無い筈ですが、それを可能にしたのがロボットの戦争利用なんですな。
 ガンダムの世界ではモビルスーツと呼ばれる、20メートル弱もある何処がスーツやねんみたいなロボットを史上初めて兵器として運用する事により、ジオン軍は華々しい戦果を上げてしまうのです。

「戦争にロボットを使えば勝てるって、そんな非現実的なw」

 ところがそうでもないんですな。
 例えばスターウォーズでは飛行機の様な物で戦ってますよね。
 でも、じゃあ飛行機ってどうやって制御しているのかを考えてみると、先ずエンジンで推進力を得て前に飛んでいますよね。
 で、曲がったりスピードを落としたりする時はどうするがっていったら、フラップとかを使って空気の流れを制御したり抵抗を掛けたりしている訳です。
 でもさ、宇宙に空気無いじゃん。後ろ向きに推進力を噴出するエンジンを着けただけじゃ、ホントは宇宙空間では曲がれないし止まれないんですよ。曲がる為のノズル、止まる為のノズルが必要で、更には上昇、下降の為のノズルも必要で、それらを的確にコントロールできないといけない。
 重力も空気抵抗も無いんだから、一度スピード出して前に飛んだら、止まる為には同じだけのエネルギーをかけて逆噴射してやっと止まれるんですね。

 翻って人型のロボットはどうでしょう。
 例えば、無重力空間に人間がプカプカ浮かんでいる状態で、その人間が横を向きたいと思ったら、身体を捻れば良いだけですよね。上を向きたかったら、足を振り上げてから身体を反らせば良い。
 この方が、飛行機みたいな物よりキュッと機敏に動ける気がしませんか?
 こういう動きをシミュレートしたプログラムを搭載したロボットに、背中と後ろに推進力、姿勢制御の為のノズルを着けて、大出力の火器を持たせたのがモビルスーツだと思ってください。
 これを利用してジオン軍はまだモビルスーツを持っていない連邦軍に戦いを挑んできた訳です。

 更にジオン軍は恐ろしい悪事を働きます。
 地球連邦を支持しジオンに敵対したスペースコロニーに住む人々を毒ガスを使って無差別虐殺し、彼らが住んでいたコロニーを、地球の連邦軍の基地がある南米ジャブローに向けて突き落とす、所謂コロニー落としを実行してしまうのです。
 しかもこれは失敗した結果、軍事基地のあるジャブローではなく民間人の暮らす北米に落ちてしまい、とんでもない数の人々が犠牲となってしまうのです。

 まあ、メタ的な事を言ってしまうと、ここら辺はジオンを「悪」として描く為の部分でしょうな。
 ガンダムという作品は史上初めてロボットアニメというジャンルで本格的なSF作品をやろうという意気込みで作られた物ではあるんですが、そうは言っても主人公が戦う相手が「世界の不平等を正し、自分達の当然の権利を手にする為に戦う人々」だったら、むしろ主人公側が悪なんじゃないかって事になってしまう訳で、今の世界ではそういうのも全然アリだと思うんですけど、「初めて」の作品でいきなりソレはハードル上げ過ぎだろうと。
 やっぱり主人公は悪と戦うという分かりやすさは残しておこうという事で、ジオンを「悪」に仕立て上げたんでしょうね。暗殺による政権強奪の面も含めて。
 子供が今までロボットアニメ観てた時間帯、チャンネルでの放送という部分はそのままなんですから。一応チビッ子達を完全に置き去りにしないではおこうと。(現実には視聴率ダダ下がりだった訳ですがw)

 兎も角も、話を戻しますと、このジオン軍を見て連邦軍も「ヤベェ俺達もモビルスーツ作んないと戦争に負けちゃう!」となって開発されたのがガンダムという訳です。

 実はこのタイミングで一つの事件が起きていて、ジオンからミノフスキー博士という人物が連邦に亡命してきているんです。
 ガンダムの世界ではこの人の発見したミノフスキー粒子という物が、SF、サイエンスフィクションの「フィクション」の部分の大半をカバーしているんです。
 例えば、戦争なんて今や無人兵器を利用され始めている訳じゃないですか。誘導ミサイルとかドローンとか。
 ガンダムの世界ではミノフスキー粒子を散布すれば、それらは使えなくなっちゃうんですね。何でかはよくわからんw
 巨大なロボットがキビキビ動けるのもミノフスキー粒子を利用しているから。
 馬鹿デカイ宇宙戦艦が地球の重力下でもゆっくり飛行できるのもミノフスキー粒子を利用しているからです。何でかはわからんw

 この亡命してきたミノフスキー博士の知識を得て、連邦軍もモビルスーツを開発するんです。

 vol.2へ続く

2021年1月11日月曜日

明けましておめでとうございます

  今年最初のブログ更新という事で、今回はサクッと、2020年に発表された音楽で、俺がSpotifyのお気に入りアルバムに登録したものを紹介する回にしたいと思います。

 ホントはイベントらしくランキング形式にしようかなとも思ったんですが、やめときます。
 音楽の評価や好き嫌いなんて日毎にコロコロ変わりますしね。
 それにね、全部は聴き切れてないんですよ。
 昨年はライブやフェス等のイベントが軒並み中止になってしまって、アーティスト、ミュージシャンは家やスタジオに籠るしかなかったから、発表された音源がかなり多かったと思います。
 純粋な新譜じゃなくてもカバーあるとかセルフカバーなんかも入れると、もう膨大な量になっちゃう。
 しかもね、俺が音楽聴くのって本を読む時か布団に入った時だから、聴き始めてもすぐに眠っちゃって全然聴いてなかったりw
 青葉市子さんの「アダンの風」なんて、何度かチャレンジしたんだけど3曲目を聴いた覚えが無いです。

 という訳で今回はアルバム、それも新譜に限ります。
 カバーやセルフカバーは除外。

 先ずは以前にもこのブログで紹介したthe naked and famousの「recover」。
 ランキングじゃないと言いつつ、結局これが昨年発表されたアルバムでは一番繰り返し聴いたので、個人的ナンバーワンかなぁ。

 あと、俺が取り上げるまでもないメジャーなところでいくとphoebe bridgers の「punisher」ですかね。
 骸骨柄の全身タイツという衣装も話題となりましたが、サウンドの方はしっとりとしていて心地好いですよね。

 それからテ-ム・インパラの「the slow rush」も今年でしたね。なんかもう随分前の気がするw
 ジャンルとしてはサイケになるんですかね。俺はあまり深く考えず、ただ心地好い音楽としか思ってないけどw

 あとはシガーロスのフロントマンのjonsiの「shiver」。

 まあこの辺りは間違いない、鉄板てヤツですわな。

 さて、ここからはもう、ダーっと箇条書きでいきますよ。

 braids 「shadow offering」
 cults 「host」
 ela minus 「acts of rebellion」
 faded paper figures 「kairos」
 lapsley 「through water」
 lomelda 「hannah」
 madeline kenney 「sucker's lunch」
 mint julep 「stray fantasies」
 misi ke 「drawing dialogue」
 mura masa 「R.Y.C」
 mxmtoon 「dawn&dusk」
 nadia reid 「out to my province」
 nick leng 「LEMONS」
 NNAMDI 「BRAT」
 noble oak 「horizon」
 novo amor 「cannot be,whatsoever」
 overcoats 「the fight」
 polythought,oliber tank 「future karma past」
 rina sawayama 「SAWAYAMA」
 seafret 「most of us are strangers」
 shallou 「magical thinking」
 tennis 「swimmer」
 羊文学 「POWERS」

 ・・・ゼェゼェ、こんくらいで勘弁してください。

 以上、興味が沸いたら聴いてみてください。

 ・・・え、牛乳の話の答え合わせ?
 しませんよ。自分で答えにたどり着いてくださいw


 おしまい