2021年5月17日月曜日

トムとジェリーをもう一度 vol.1

  皆さん勿論トムとジェリーは大好きだと思います。(強制)
 ただ、「子供の頃は好きだった。大人になってからは観た事ない。」という方も多いんじゃないでしょうか。
 そんな方には、是非大人になった今、もう一度トムとジェリーを観ていただきたいと思うのですよ。
 子供の頃はただ「面白いアニメ」としか思ってなかった物が、大人の目で見ると「何じゃこの完成度の高さは!」と驚くと思います。

 何が凄いかって、音楽も含めた音声と、映像が完全にシンクロしているんですよね。
 トムがそ~っと歩けば音楽もそ~っと、ジェリーがちょこまかと走れば音楽もちょこまかと。こういう全てのタイミングや音楽の雰囲気なんかが、毎回毎回きっちりと完璧にフィットしてるんですよ。

 何でこんな物が作れたんでしょう。

 先ず、多くの日本人が思い違いをしてると思われる点なんですけど、トムとジェリーって基本、テレビアニメではないんですよ。
 「何言ってんだコイツ」と思う方もいるでしょう。テレビで放映されてたじゃないかと。
 トムとジェリーが作られ始めたのは1940年です。終戦が1945年だから、まだ戦時中ですよね。という事は、まだカラーテレビはこの世に存在してませんよね。
 では、トムとジェリーの白黒の映像って見た事ある人います?
 いないですよね。だって存在してないんだもん。

 トムとジェリーは実は、映画館で公開されていた短編フィルムなんですよ。
 いや、勿論後年になってテレビ版も作られてますけどね。

 映画って今はデジタル化されてますけど、「ニューシネマパラダイス」なんか観た事のある人なら知ってると思うんですが、昔はでっかい映写機をモーターでブン回して、繊細で燃えやすいペラペラのフィルムを回して上映してた訳で、それが長編映画となると、そこそこの重さのフィルムをセットして、それを2時間とか回しっぱなしにする事になるという事ですよね。
 そこで長編を上映する前に映写機の試運転、動作チェックをする為に短編フィルムを回したいという事なんですね。
 試運転なんて開館前に済ましとけよと思うかも知れませんが、この短編が魅力的なら、長編が始まる前にちゃんとお客さんが映画館に入ってくれて、尚且つ試運転も兼ねられると。
 今じゃ信じられませんが昔は映画館って途中で出入りできたんですよ。上映中の映画館に入って途中から観て、最後まで観ても映画館に居座ってその映画の次の上映の頭から観て、自分の見始めたところまできたら出てっちゃう。こういう事が普通にされていたんですね。
 ついでに言うと、席が埋まってたら立ち見も普通にされてました。
 勿論映画館側としては途中の出入りはなるべくしてほしくない訳ですから、試運転と兼ねて短編フィルムを流そうと。

 で、この短編フィルムのトムとジェリーがどの様に作られていたかというと、先ず映像作家がこういう映画を作ろうというプランを描いた絵コンテという物を描くんです。
 4コマ漫画の様に場面を切り取った絵に、動き等の説明文を書き着けた物ですね。
 で、これを実際に映像を作るより先に作曲家に渡すんです。
 作曲家はこれを元に、全ての展開やタイミングを想像して、尚且つ程よい長さ(トムとジェリーなら6分程度)になる様に音楽を作るという訳なんですな。

 

vol.2 へ続く