2020年11月16日月曜日

竹取物語を読んでみた vol.2

vol.1の続き

  先ずは帝からの使いが竹取の翁の所にやってきて、姫を宮仕えにという話を持ってくるんですが、これは帝からの命、つまり勅命なので普通はイヤもへったくれもないんですよね。断るという選択肢は無いんです、ホントは。

 しかもこの期に翁にも宮中に職を用意するとまで言ってきてるんですよね。
 翁は竹を取ってきて篭なんかの細工物を作って売ったり、筍を売ったりして生活していた、言ってしまえば肉体労働者なんですよ。
 かぐや姫を家に迎え入れてからは、その商売で大儲けして財を成すんですけど、それでも宮中で働く=帝の臣下となるというのは破格の事なんですね。

 それに、後宮に迎え入れられるというのは、当時の女性たちの夢なんですよ。たとえ多数存在する更衣の一人だとて、帝のお妃さまになるんですから。
 今の感覚だと、別に恋愛したわけでもない帝の血筋を絶やさない為にSEXして子供を産まなきゃならないなんて何が幸せなのかとなってしまいますが、当時の感覚ではこれ程御目出度い事はないんです。

 だから翁としては大喜びで、なんとか実現したいんだけど、当の姫は「5人の男性に無理難題を吹っ掛けて袖にしておいて、帝の下にホイホイと行く訳にはいきません」と断ってしまう。
 なにしろ、この無理難題のせいで亡くなった人まで出てしまいましたからね。

 翁は仕方なく帝からの使いの人に「ウチの姫は産まれから何から普通でなく、世の中の常識というものに疎いもので、スミマセン。」と伝え、帝からの使いの人も仕方なくそれをそのまま帝に伝えるしかない。

 ここで帝が所謂暴君みたいな人であれば、勅命を拒否したんだから「ぁあ?、殺すぞ?」となってもおかしくないんですが、この帝は「へぇぇ、何その娘。見てみたい。」と言い出して、狩りに出掛けると言って宮中を出て、翁に手引きさせて姫の居室に忍び込んじゃう。(だから、細かい事言うとこの場面の帝は狩衣姿の筈なんですよね。ここもアニメは間違い。)
 で、映画ではここで姫を後ろから抱きすくめる訳ですが、原作では袖を掴んだだけです。
 勿論当時の感覚だとこの「袖を掴む」もかなりセクシャルな行為なんですけどね。
 で、映画と同じく姫の姿が見えなくなるという不思議な事が原作でも起こるんですけど、ここからが随分違う。

 帝が「すまなかった、もう貴女のことは潔く諦めるから、せめてどうか姿を見せてください。」と謝罪して、かぐや姫も姿を現します。
 勿論、当時の女性らしく袖でお顔は隠してはいますけどね。

 で、姫は帝をすっかり許して打ち解けちゃって、なんとここから文通友達になっちゃうの。ペンパルですよペンパルw
 「ヒィイイイイ、イヤァァァ! もうお月様に帰りたい!」じゃないの。仲良しなのw

 で、その後姫はだんだん塞ぎ込む様になっていって、メソメソ泣いて暮らすようになって、翁やその奥さん(媼)に「何故泣くの?」と聞かれて「もと居た所に帰らなくてはならない。あなたたちと別れるのが辛い。」と言い出すんですね。
 実はかぐや姫はもと居た世界で罪を犯して、罰として下界、つまりこの世に送られたのだと。
 で、所謂刑期が終わったのでもと居た世界、ここより上位の世界に戻されるのだと。 本来は喜ばしい事なのに、翁や媼、そして仲良くなった帝と別れるのは悲しいというのです。

 更には帝に手紙で、「宮仕えを断ったのは、いずれ帰らなくてはならないと分かっていたからで、貴方が嫌だからではなかったの。」とまで言っているんですよ。

 もうこの時点で映画「かぐや姫の物語」とエライちがうんですけどね。
 ここから更に驚きの展開。
 もう映画云々とかじゃなく、日本中の殆どの人が、竹取物語の本当の結末を知らないんじゃないでしょうか。

 姫が去っていっておしまい、じゃないんですよ、竹取物語。

 姫の元に迎えがやってきて、もと居た世界に帰ろうという際、迎えの者は姫に不老不死の薬を飲ませるんです。
 どうやら姫のもと居た世界、上位世界(月というのは単なる中継点、通過点でしかないみたい。)というのは不老不死の世界なんですね。

 そしてなんと、この不老不死の薬をかぐや姫はこっそり地上に残していくんですよ。
 しかも、それを翁でも媼でもなく、帝に渡してほしいと言い残して。
 もう完全に最愛の人は帝なんですね。

 しかもしかも、ですよ。
 その不老不死の薬、貰った帝は「要らね」っていうのw

 「不老不死なんて虚しいだけ。その薬は月に一番近い場所で燃やしてしまって。」と命じてしまうの。

 で、その「月に一番近い場所=一番高い山」で「不老不死の薬」を処分したから、その場所は「ふじさん」と呼ばれる様になったというのが、竹取物語のオチなんですよ。

 ねぇコレ知ってました?
 俺は恥ずかしながらこの歳まで知りませんでしたよ。

 実はこの他にも竹取物語にはいろんな事の由来が書かれています。
 星新一さんの現代語訳ではこの辺の事や、作中で詠まれている和歌の解説なんかも非常に丁寧にされていて、とても分かりやすかったので、興味が湧いた方は是非読んでみてください。
 まあ、もうオチはバラしちゃいましたけどw

 という訳で、アニメの「かぐや姫の物語」どころか、そこら辺の「竹取物語」の絵本とかでも、原作の内容をちゃんと描いていなかったというお話でした。

 おしまい